そうして、2023年10月、最後の68品目目のインタビューが終わり、無事に全ての調査をやり遂げることができた。ただ、「ようやく終わった」と一息つく暇もなく、最後の大仕事にかかり始めた。調査結果を伝統工芸のレッドデータブック、それも相関関係がわかりやすいネットワーク図としてまとめる作業だ。
完成したレッドリスト相関図
京都の伝統工芸品にはどのようなものがあって、それぞれがどのように関係しているのか。存続の危機に瀕している工芸品は、どこに問題を抱えて(素材なのか、需要なのか)消えつつあるのか。それを誰もが直感的に理解するためには、職人さんたちから聴き取った調査結果を図化して、京都の中でそれぞれの工芸品が繋がっている様子を図示する必要があった。しかしながら、本業の職場でもわかりづらい資料を作っては上司に怒られ続けてきた筆者には、残念ながら、調査結果を一覧性ある資料に落とし込むのは100%無理だ。
そんな時に救世主が現れた。それがStudio colife3の池内健さんだった。池内さんは普段建築のお仕事をされているが、筆者の脳内に散らかった情報を丁寧にまとめて下さった。そこから定期的に池内さんとも全体の方向性を話した。恐らく伝統工芸の現状にはその時点ではあまり詳しくなかったようだが、打ち合わせの回数を経るごとにどんどん理解を深められて、最終的には筆者と同じ理解レベルで資料制作を進めることができたのは、本当に同氏の能力の高さからだったと思う。
それでも、資料づくりは簡単ではなかった。調査から得られた示唆があまりに多すぎて、あれもこれも資料に組み込もうとすると、結局何を示したいのかがわからなくなってしまうからだ。そこで、今回作成した2枚の資料それぞれに1つの大きなメッセージを託すことにした。
1枚目は、京都の地図を背景に、「茶道」や「歌舞伎」といった諸芸道や「寺社」「花街」といった無形文化がプロットされている図だ。それを囲むように、工芸品とその工程の様子が描かれている。上述の通り、工芸品を考える際に、それを使う場所をイメージすることは重要だと思い、無形文化・有形文化が力を合わせて京文化を守っている様子を描き出した。
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