朝ドラことNHK連続テレビ小説の新作『虎に翼』が面白い。名作になるのではないか。
まずテーマが大きいのが良い。ジェンダーフリーと多様性。単なる有名人の一代記や成功譚、苦労譚ではない。
「都合が良過ぎない」巧みな脚本
ヒロインは猪爪寅子(伊藤沙莉)。「五黄の寅」だった1914(大正3)年に生まれ、女性初の弁護士、女性第2号の裁判官となって、性別による差別の解消など公平な社会の実現を目指す。一方で結婚に幸福があると考える寅子の友人・米谷花江(森田望智)らの生き方も否定しない。
吉田恵里香氏による脚本も巧みで飽きさせない。第1週(2~5日)のヤマ場は第5回だった。結婚を拒み、明律大女子部法科への進学を望む寅子の考えを認めなかった母親・はる(石田ゆり子)が、豹変した。
明律大で講義をした際にたまたま寅子と出会った裁判官・桂場等一郞(松山ケンイチ)が、甘味処「竹もと」で寅子の法曹界志望を頭ごなしに否定したからだ。桂場は寅子が男性と渡り合うのは無理だと断じた。
「君のように甘やかされて育ったお嬢さんは土俵に上がるまでもなく、血を見るまでもなく、傷ついて逃げだすのがオチだ」(桂場)
この言葉を聞いたはるは激怒する。
「おだまんなさい! 何を偉そうに! そうやって女の可能性の芽を潰してきたのは、どこの誰? 男たちでしょ!」(はる)