口先だけの人ではなく、1978年から所長を務めた横浜家裁では黒ずんでいた調停室の壁を明るいホワイトに塗り替え、絵もかけ、カーテンを新調する。昼休みには廊下に音楽を流した。深い悩みを抱えた人たちの心を少しでも和ませようという配慮からであった。

1979年、横浜家庭裁判所長時代の三淵嘉子さん(写真:共同通信社)

 それでいて仕事一辺倒の人ではなく、宝塚歌劇を愛し、歌うことが大好きだった。職場の慰労会などで『リンゴの唄』などを披露した。朝ドラのモデルとして格好の人と言えそうだ。

実在の人物をモデルにしたヒロインが人気

 近年の朝ドラはヒロインにモデルがいる作品が目立つ。1961年度の朝ドラ第1作から1990年度までの61作品はモデルのいる作品が10本に過ぎなかったが、2000年度以降の48本では16本もある。約3分の1だ。

 その中でも特に評判高く、人気もあったのは日本女子大学校(現・日本女子大)の設立者の1人で実業家だった広岡浅子をモデルとする『あさが来た』(2015年度下期)や信楽焼の女性陶芸家の草分けで、骨髄バンク設立に向けて奔走した神山清子をモデルとする『スカーレット』(2019年度下期)など。社会のために役立とうとした尊敬できる人物の物語に視聴者は惹き付けられる。それは自然なことだろう。