同大学では昨年秋学期以降、胡教授が担当してきた中国語の各コースやゼミなどの講義は、急きょ他の教員に代理を頼んで乗り切った。教員の病気休職に準じた措置だが、新学期を目前にした現段階でも依然連絡はつかないままだ。

 この状況が長引けば学生らに動揺が広がる恐れもあるが、大学では「胡氏は正式な本学の教員であり、状況に変化がない場合、新学期も引き続き教授が担当する講義は他の教員に代わりをお願いすることになる」と説明しており、困惑の色は濃い。

2016年5月4日、中国浙江省杭州市にある浙江工商大学で講演した際の胡士雲教授(神戸学院大HPより)

数々の名士が突然失踪状態になる中国

 日本在住の中国人名士が一時帰国を機に連絡がとれなくなったケースでは、筆者は産経新聞に所属していたころ、中国・江蘇省に2016年11月に業務目的で一時帰国した岡山県の華僑華人団体のトップが、翌年3月まで中国当局にスパイ容疑で身柄を拘束された事案をスクープし、その後「アジア血風録」(MdN新書)として上梓したが、中国では2014年に反スパイ法(中華人民共和国反間諜法)が施行され、翌15年以降、華僑華人に限らず日本人を含む外国人の身柄拘束も相次いだことはよく知られている。記憶に新しいところでは2023年3月にアステラス製薬の邦人男性社員の拘束が判明し、10月に正式に逮捕された。

 日本在住中国人に限っても、時期は多少はずれるものの2013年に東洋学園大の教授が中国当局に拘束され、約半年後に解放されたケースにはじまり、2016年3月には法政大教授が一時期帰国中に中国で事実上の拘束を受け、一時失踪状態に。また同年10月下旬には立命館大学で立命館孔子学院名誉学院長も務める教授も一時帰国出張中に連絡が途絶え失踪状態となった。2019年には北海道大の邦人教授が一時身柄を拘束され、2カ月後に解放されたが、同時期には北海道教育大(札幌市)の中国人教授の長期所在不明も取りざたされた。

 筆者はまた、2020年から21年にかけ、着任後1年もたたない前中国駐大阪総領事(大使級)が一時帰国後に失踪状態になったこともスクープした。