近年スニーカーがトレンドとして注目を集めるようになった。しかし『スニーカー学 atmos創設者が振り返るシーンの栄枯盛衰』(KADOKAWA)の著者・本明秀文氏は、スニーカーブームはすでに終わっていると言う。一時は社会現象にもなったスニーカーを取り巻く社会の流れはどのように変化していったのか。本書では、ブームを起こした4つの要因も分析し、あるべき業界のあり方にも言及している。
(東野 望:フリーライター)
スニーカーブームを知れば世界経済がわかる
著者の本明氏は1996年に、原宿でスニーカーの並行輸入店「CHAPTER」を創業した。2000年には数多くのスニーカーを取り扱うショップ「atmos」を開き、いわゆる“裏原”カルチャー*を黎明期から25年以上にわたって見続けてきた。
*東京・原宿の裏通りのエリアから発信された若者向けのさまざまなファッションやカルチャーのこと
ここ数年は“ハイプスニーカー”と呼ばれる人気モデルがたびたび注目を集めるようになっていたが、本明氏はブームの終了を早くから予想。実際2023年12月時点でスポーツブランド「NIKE」の株価は2021年の2分の1にまで下落し、人気モデルだったはずのスニーカーが売れ残るなど一気に市場が冷え込んでいった。
本明氏曰く、こうしたスニーカーブームの興隆と衰退は過去にも同様の流れで繰り返されてきたという。
スニーカーは買い替えのスパンを考慮すると消耗品であり、私たちの日常に欠かせない生活必需品だ。その一方でファッション性やステータスを表すアイテムとして扱われることもあり、ときには投資の対象となることもある。
言ってみれば、この世に流通する商品のあらゆる要素を兼ね備えているのが、スニーカーというアイテムなのです。
つまり、スニーカーを紐解けば経済がわかる。それも国際経済という大きなトレンドが理解できると言っても大袈裟ではないでしょう。
日本初のスニーカーブームは裏原カルチャーから誕生した
日本最初のスニーカーブームは、90年代の裏原で起こったと言われる。当時は古着ブームによって雑誌でもヴィンテージアイテムが多く取り上げられ、「リーバイス501」などを身につけることが裏原の若者の間で一種のステータスとなっていた。そして裏原に集まった人々の中には、スニーカーに魅せられたマニア的存在も少なくない。
世界で初めてスニーカーに付加価値を付けたのは、間違いなく90年代の裏原に集まったスニーカーフリークでした。
スニーカーの魅力に注目が集まり始めると、メディアなどでも有名人たちの衣装にスニーカーが取り入れられるように。結果としてブームが起こったのだ。