今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。

写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

 年も明け、新たにスタートした令和6年の干支は辰。辰(龍)といえば、“近代日本の夜明け”とも呼ばれる明治維新の立役者の1人、坂本龍馬の足元にブーツが履かれていたのは誰もが知るところ。そこから後の昭和の世まで、酒、車、ファッションと舶来物が、やたらとありがたがられてきた島国ニッポン。

 それが今や、アニメ、ラーメン、大谷翔平と枚挙に暇がないほど日本生まれのあれこれが、世界中から熱烈にラブコールを受ける新時代。そこで再び存在感を強めているのがジャパンブランドたちである。

 2019年、突如降って沸いた新型コロナウィルス騒動によって、1854年の日米和親条約締結から約165年ぶりの鎖国状態となった我が国。そこで内需が拡大し、海の向こうでは電化製品や車を中心に長らく最先端・高品質の代名詞となっていた日本のモノづくりが再注目されるようになったことに起因する。この動きはスニーカーにおいても同様だ。

 これまで絶対王者として君臨してきたナイキを筆頭とした海外スポーツブランドではなく、日本生まれのブランドを推す声が増加している。そこで今回は、古代より大陸において力のシンボルとされてきた五爪の龍になぞらえて、“世界に誇れるジャパンブランド”をテーマに、厳選された5足を紹介する。

 

1. foot the coacher「ONE PIECE SNEAKERS」

スニーカー¥39,600/フット・ザ・コーチャー(オーセンティック・シュー&コー)

洗練されたミニマルなルックスに、快適性も兼ね備える

 英国の著名シューズブランドでキャリアを積んだ、デザイナー竹ヶ原敏之介が手掛ける同ブランドは、卓越したデザイン性と熟練の技術力が結実した、品質の高さに定評あり。この「ワンピース スニーカーズ」はその魅力を凝縮した1足と言える。

 キメ細かなステアハイドレザーを用いたミニマルで洗練された表情のアッパーに、しなやかで返りの良いグリッパーソールを搭載することで耐摩耗性とグリップ力をも両立したアウトソール、さらに低反発クッションを採用して履き心地を向上させたインソールが合体。靴作りにおいて“時代との調和を図りながらデザインをすること”を標榜するデザイナーの美学を反映し、ビジュアルと快適性を兼ね備えた傑作が生まれた。