今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。

写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

 様々なメディアで見聞きする“じゃない方”というワード。来歴を調べてみると、2000年代初頭には既に言い回しとして存在していたようだが、頻繁に使用されるようになったのはここ最近。用法としては、認知されていて引きのある人気者ではなく、どちらかといえば存在感の薄い相方を差す言葉として、主にコンビで活躍するお笑い芸人に使われている。

 この概念はスニーカーを語る際にも適用できるのではないだろうか。ここでいう“認知されていて引きのある人気者”とは、各ブランドのアイコンとなっている名作モデルに置き換えられる。

 ナイキであれば「エア フォース1」、コンバースなら「オールスター」、アディダスでは「スーパースター」…etc.と並べれば枚挙にいとまがない。しかし、光と影が表裏一体であるように、名作モデルの影に隠れながらも一部の識者たちの間で人気を集めているモデルも存在する。人はそれを“裏名作”と呼ぶ。そう、これが今回のテーマだ。

 誰しもが「人とかぶりたくない」とオリジナリティを求めていた時代は今や昔。現代では、いかにして他人からの“イイね”を獲得できるかが重要。そんな時代に“じゃない方”を選ぶというリスクを冒してまで、自分だけのスタイルを求める天邪鬼たちに送るのが、この5足だ。

 

1. New Balance「ML610XA」

スニーカー¥24,200/ニューバランス(ニューバランスジャパンお客様相談室)

テクニカルな意匠で魅せる2010年代パフォーマンス名機

 一世紀以上もの歴史を誇る名作の宝庫、ニューバランス。その中でも一般的に人気を集めているのは、フラッグシップである「99X」番台や「574」だが、ここで注目したいのが2000年以降に登場したパフォーマンスモデルたちだ。本作は、2011年に登場したエントリー層向けのトレーニングシューズ「610T」をベースに、防水・透湿性に優れたゴアテックスメンブレンをアッパーに搭載することで、テッキーなルックスを補強する機能性を加えた。

 また踏破性に優れ、様々なフィールドに対応するソールユニットは当然ながらオリジンのものを継承。素早くかつイージーなフィッティング調整を可能にするクイックシューレースも、アクティブなムードを盛り上げる一助となる。