今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
キャッチーな話題性があり入手困難=良品という一部のマニアの認識が一般層にも伝播した結果、白熱化の一途を辿っていたスニーカー業界のハイプ戦争。だがこの世は諸行無常。世界的な物価上昇の煽りを受け、投資対象として賑わっていたリセールマーケットも、一気に沈静化に向かっている。
そんな世相もどこ吹く風。“良い意味での地味さ”をもって世界中で変わらず人気を集めるブランドがある。それがニューバランスだ。医療用矯正靴の開発に端を発し、革新性が尊ばれるランニングシューズの世界で進化し続けてきた同社のプロダクトは、いつの時代でも愛される普遍的なデザインが持ち味。あらゆる着こなしに馴染む高い汎用性と、一度でも履けば分かる極上の履き心地を備えながらも、どこか品の良さを漂わせる様はまさしく優等生の如し。
ここでは、1906年から続く長い歴史の中で紡がれてきたアーカイブ・デザインを継承しつつ、時代に合わせた“新たなバランス感覚”で仕上げられた名作5モデルにスポットを当てる。
1. New Balance「990 v6 GL6」
“1000点満点中990点”を謳うフラッグシップ機種の第14世代
ニューバランスの大名跡といえば「990」シリーズに他ならない。1982年に当時の最新技術を結集してオンロード用ランニングシューズとして誕生した初代は、“1000点満点中990点”という強烈なキャッチコピーと1ドル=約280円の時代に約100ドルという挑戦的価格に相応する優れたパフォーマンス性能が話題を呼び、一躍人気モデルに。
今年4月に登場した最新「990v6」では甲部分のミッドフットサドルを廃し、ピッグスキンスウェードとシンセティックレザーのオーバーレイをヒールからトゥまで流れるように配置した流線形シルエットが新鮮。ミッドソールに新しく搭載されたフューエルセルの生むクッショニング、反発弾性、軽量性がこれまで以上の履き心地を約束する。