今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
冬は一年中を通して、最も星空が美しく見える季節である。漆黒の夜空に浮かび、不思議な光を放つ星々に、古今東西の人々は天上世界の神々の物語を夢想し、時に旅の目印としてきた。最も有名なのが北極星だ。羅針盤やコンパスが発明される以前、天の北極で静かに光るその星が常に北を指し示すことで、旅人は進んで行く道を見誤ることがなかった(南半球では南極星がこれにあたる)。
なんて、いきなり星の話から始めてしまったが、ここからが本題。今回は、華々しく光る話題作が現れては消えていく諸行無常のスニーカーシーンにおいて、1908年の創業以来、常に定番として静かに光り続ける星印、“コンバース”がテーマだ。
雨や雪の中でも作業できるように開発されたラバーシューズの成功から始まった同社の歴史は、数々の名作モデルを輩出し、115年の時を経て今へと至る。ここではそんな歴史を彩ってきた名作モデルの中から、元祖バッシュこと「オールスター」など今でも入手が叶う5つのモデルを厳選して紹介。これらに共通する魅力を1つ挙げるとすれば、時代やトレンドに左右されない普遍的デザインに尽きる。あまりにも選択肢が多すぎて、何を買えばいいのか道に迷っている読者諸氏の指針となれば、これ幸いだ。
1.CONVERSE「ALL STAR US OX」
ローテクスニーカーの代名詞にして、不朽の元祖バッシュ
コンバースの歴史に燦然と輝く名作中の名作、それが1917年誕生の「オールスター」。当時まだマイナーなスポーツだったバスケットボール用に開発され、足首を保護するハイカットデザインと軽量なキャンバス素材のアッパーの組み合わせが、プロユースにも耐えうると人気を集めた。アンクルパッチに輝くスターマークは、1928年に登場し、今やブランドの象徴に。
そんな名作のDNAを継承しつつ、より運動性の高いローカットが誕生したのが1957年。本作は洗い加工を施したキャンバス、艶めくラバーパーツ、コットンシューレースといった当時の雰囲気を再現したディテールに、現代的な履き心地をプラス。