今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。

写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

 まず、最初に触れておくべきは“コートシューズとは何を指すのか?”。要は定義である。コートには宮廷、中庭という意味があり、一般的にテニスやバスケットボールといった、コートと呼ばれる試合場にて行われる運動競技用のシューズ、もしくはそれらをイメージしたシンプルなローテクスニーカーを指す場合が多い。

 アディダスを一例に挙げるならば、テニス用の「スタンスミス」、バスケットボール用の「スーパースター」がこれに当たる。ちなみに、バドミントン用に開発されたコンバースの「ジャックパーセル」も同ジャンル。以上から導き出されるのが、スニーカー史に名を残す傑作の多くがコートシューズであるという確たる事実。

 また、先に述べたように、これらに共通する無駄な装飾性を排した“シンプルさ”は、優れた汎用性にも通じ、ローテク特有のフォルムはスマートな印象を着用者に付与する。これらの観点から、多様なスタイルとシーンに対応するコートシューズは、大人の足元にふさわしいと言い換えることが可能だ。今回は、晩秋の足元にクリーンな雰囲気を呼び込む5つのモデルを厳選。「コートの中では履かない」なんて嘯く人にも、ぜひアタックしてもらいたい良作揃いだ。

 

1. Reebok「CLUB C 85 VINTAGE」

スニーカー¥14,300/リーボック(リーボック)

経年変化を“美しさ”と捉えるヴィンテージ愛好家に

 やはり最初のサーブは、テニスシューズから始めるのが正道か。誕生は1985年。モデル名の“C”がChampionを意味する「クラブC」。その汎用性の高さからデイリーユースでも親しまれ、リーボックを代表するローテクモデルとして、不動の地位を確立。

 ここでご覧いただくのは、オリジン発売当時に話題をさらった、ガーメントレザー(高級天然皮革)のアッパーによる高いフィッティング、軽量なEVAミッドソールが生み出す優れたクッション性とラバーアウトソールが有するグリップ性能、そして肌触りも柔らかなテリー素材のライニングが再現されたOG仕様。経年による日焼けや質感の変化により、侘び寂びの精神にも通ずる美しさを追求。ヴィンテージの称号は伊達じゃない。