今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。

写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

“何処の馬の骨”なんて言葉が、素性のはっきりしない者を嘲る際に使われることは皆様ご存じの通り。では、有名スポーツシューズブランドの名前に使われながらも、馬かどうかさえ怪しい動物をご存知か。その名はリーボック。「ではその正体は?」と調べると実はこれ、鹿にもよく似たガゼルのアフリカでの呼び名。以上、知らぬ存ぜぬであっても馬鹿にはされないが、せっかくなら覚えておきたい豆知識。

 というわけで今回は、これまでにアディダスから始まり、ナイキ、コンバース、プーマと誰もが知るスポーツシューズブランドの名作を取り挙げてきた当シリーズの慣例に倣い、“リーボックの名作”をテーマとする。

 元・陸上競技の選手でもあった創業者のJ.W.フォスターが、イギリスで1900年に“より速く走るために”と作り始めたシューズは、その革新性からまずランニングの世界で認められ、その後、テニスやバスケットボール、フィットネスなどのジャンルへと大きく広がっていった。ここでご覧いただくのは、1990年代半ばに巻き起こった第一次ハイテクスニーカー・ブームを代表する名機「インスタ ポンプフューリー」を筆頭に、今やブランドの骨子となっているアイコン的モデルたちだ。

 

1. Reebok「INSTAPUMP FURY 95」

スニーカー¥19,800/リーボック(リーボック)

第一次ハイテクスニーカー・ブームを象徴する傑作

 シューレース自体を廃し、アッパー内部に納められていたブラッダー(空気室)に空気を注入することで、フィット感を調節するインスタポンプテクノロジーを搭載し、屈曲性を高めた前後分割型のスプリットソールを採用。“世の中に存在しないデザインを生み出す”という野心的なコンセプトを具現化し、1994年3月にデビューを飾ったその斬新なランニングシューズは「インスタ ポンプフューリー」と名付けられた。

 40代オーバーであれば、英国版『cut』でアイスランド出身の歌姫・ビョークが着用してカバーを飾ったという逸話を知る人も多いだろう。こちらはその当時のディテールを忠実に再現し、品の良いモダンベージュを基調に塗り替えられたシーズナルカラー。オリジナルの魅力を損なわず、大人の一足に。