話したことが伝わっていない——。こんな思いをすることが往々にしてある。会社やビジネス上のやりとりで誤解があると、自身の評価や成績にも影響しかねない。伝わりやすい話し方はどのようなものなのか。テレビ東京ワールドビジネスサテライトの解説キャスターが、実体験を基に対話形式で「伝わる話し方」のコツを公開する(全3回の2回目)。
(*)本稿は『「話す・聞く・書く」伝え方のシン・常識 半分にして話そう』(山川龍雄著、日経BP)の一部を抜粋・再編集したものです。
山川龍雄・テレビ東京解説キャスター(以下、山川):伝える相手に寄り添うという点では、ジャパネットたかたの創業者である高田明さんは卓越した能力を持った人だと思います。
——高田さんは、伝え方の達人としてよく引き合いに出されますが、山川さんもそう思いますか。何がすごいところなのでしょう。
山川:テレビ通販で商品を説明する際、スペックの説明から入りません。「その商品を買えば、視聴者の生活がどう幸せになるか」を伝えようとしています。
高田さんの話術については、ICレコーダーを売る時の事例がよく引き合いに出されます。「お父さん、お母さん、留守しがちな息子さんに、冷蔵庫にね、こういうのをちょっと作って置いてあるからって、ICレコーダーに吹き込んで、伝えるのはどうですか。ちょっとお互いコミュニケーションが足りないのが、解消されそうでしょう」みたいなことを言うのですよ。
——あの独特の長崎弁の甲高い声で。
山川:そう。記憶に残る話し方ですよね。しかも高田さん自身が実際に使ってみた体験談が土台になっていることが多い。「自分が使ってみて感動したことを、独り占めしませんよ」というスタンスで話します。
——普通、ICレコーダーを売るなら、音質がいいとか、何時間収録できるとか、スペックの説明に終始するところですが、確かに高田さんの話す内容は顧客目線が貫かれています。