伝える力は一生求められる

——ここまで聞いていると、話が長くて、人生において得することはなさそうです。

山川:まさに私がこの本で言いたかったのはその点です。仕事にしろ、プライベートにしろ、その土台はコミュニケーションで成り立っています。そして、もしあなたが、要領を得ない話を続けるタイプだとすれば、人生でかなり損をすると肝に銘じた方がいい。伝える力の有無で人生は大きく変わります。そして、後の章で詳しく説明しますが、聞くスキルや書くスキルが不足している人も同様に損をします。

——コミュニケーション力というのは、公私問わず、一生ついて回るものですからね。

山川:人生を劇的に変えるツールと言っていいでしょう。日本人の中で大学を卒業して定年を迎えるまで同じ会社に勤める人の割合は男性でおよそ3割、女性は6%というデータがあります。つまり多くの人は定年までに職場を変えています。

 そして、会社の中でのみ通用する専門性やスキルを磨いても、別の会社で通用するかどうかは分かりません。その点、コミュニケーション力は、どこに行っても求められます。伝え方は、生涯において求められるスキルと言っていいでしょう。

——だとすれば、できるだけ人生の早いうちに修正できるところは、直した方がいいですね。

山川:早ければ早いほどいい。それだけ人生の時間が残されているわけですから。それに年齢を重ねるほど、一度染みついた自分のスタイルを崩すのは容易ではありません。

——自分のコミュニケーションについて初めて悩むタイミングが、就職活動の時期ですよね。面接をいくら受けても、内定をもらえず、思い悩む人が続出します。

山川:多くの人が、学生と社会人の違いを明確に認識できていません。

 学生時代までは、基本的には気の合う相手とだけ付き合えばよかった。周囲にいるのは、話が長くても根気よく聞いてくれる両親や兄弟、親友、学校の先生など。だから、自分のコミュニケーションに問題があっても、気にせずに済みました。ところが、就活になると、状況は一変します。面接官は、多くの応募者の中から、有望な人を選別するために、あなたの話を聞いている。