人は最後まで話を聞いてくれない

——一応、相づちは打つけれども、聞いたフリをしているわけですね。

山川:テレビの仕事をするようになってつくづく分かったのは「人は最後まで話を聞いてくれない」ということです。たった1分のコメントでも「つまらない」と思えば、問答無用でチャンネルを変えられてしまう。私はそこから悟りました。普段の会話でも、面白くなければ、相手は聞いたフリをしているのだろうなと。

——そもそも論ですけど、人はなぜ最後まで話を聞かないのでしょう。昔に比べてどんどんその傾向が強まっているようにも感じます。

山川:そうですね。最近は「タイパ(タイムパフォーマンスの略)」という言葉もあるように、時間を効率的に使おうとする考え方が強まっています。YouTubeやTikTokのショート動画が典型ですが、面白くなければ、2~3秒で次のコンテンツに飛び移ってしまう。

——私もコンテンツを作っている側にいるので、あれを電車で隣に座っている人がやると悲しくなります。「これはいらない、これもいらない」と一瞬でコンテンツが切り捨てられているような気がするのです。

山川:作る側としては、切ない心境になりますね。やはりスマホの浸透が大きいと思います。コンテンツが溢れているので、「お前に代わるコンテンツはいくらでもある」みたいな感覚が広がっています。

 かく言う私も、YouTubeなどを見ている時は、指でスライドしてコンテンツを切り替えています。自分も見る側に立てばそうなのだから、テレビで自分の話を1分も聞いてくれないと嘆くのは、贅沢なのかもしれません。