(英エコノミスト誌 2024年2月10日号)
アラブ諸国は目を見張るような「安全の保証」をイスラエルに申し出た。
イスラエルが1967年の六日間戦争(第3次中東戦争)で収めた勝利は、スーダンのハルツームで開かれたアラブ諸国の首脳会議から「3つのノー」を突き付けられた。
イスラエルとは講和をしない、国家として承認しない、交渉もしないということだ。
今日のガザでの戦争にはその正反対の効果があるように見えると米国政府関係者は話している。
アラブ諸国のなかで最も重要なサウジアラビアが、講和と交渉、ユダヤ人国家の承認に「イエス」と言っているからだ。
イスラエルが1967年に占領したヨルダン川西岸とガザ地区でのパレスチナ国家建設に向けた「明確かつ信用できる方針」に同意するなら、という条件付きだ。
また、さらに2つのイエスが提示される可能性もある。
アラブは外交関係だけでなくイスラエルの安全を保証する、そしてガザ地区の運営に適した形にパレスチナ自治政府(PA)を改革することをアラブ諸国が支援する、という2つのイエスだ。
ガザの恐怖をチャンスに変えられるか?
米国のアントニー・ブリンケン国務長官が先日、アラビア半島を縦横に行き来した後、イスラエルに届けたメッセージはこのような内容だった。
同氏が中東を訪れるのは、ハマスによる10月7日の攻撃以降だけで5度目となる。
だが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の冷淡な対応から判断するに、今度はイスラエルが「ノー」を連発している。
中東の見通しはかなり厳しいように見える。
イランの友軍はレバノンでイスラエルとたびたび交戦している。シリア、イラク、イエメンにいる友軍はブリンケン氏が中東を訪れる前から、そして訪れている最中にも米軍を攻撃し、報復攻撃を招いている。
ガザでは2万7000人を超えるパレスチナ人が命を落としたと伝えられる。住民のほとんどが住処を追われ、飢えと病に直面している。
イスラエルは国際司法裁判所(ICJ)でジェノサイド(民族大量虐殺)の罪を問われている。そして、ジョー・バイデン大統領のイスラエル支持により米国の評判も悪化していると多くの人が考えている。
だが、ブリンケン氏はガザの恐怖を和平のチャンスに変えようとしている。
また、米国政府当局者はサウジアラビアの事実上の支配者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子との対話を経て、気分が高揚しているように見える。