6 『グリーンマイル』(1999、188分) フランク・ダラボン監督・脚本。トム・ハンクス、デヴィッド・モース、ダグ・ハッチソン。スティーブン・キングの原作。

 養老院で、老いたトム・ハンクスの回想としてはじまる。1935年の話。二人の幼い姉妹を殺したかどで逮捕された、大男の死刑囚のジョン・コーフィ(マイケル・クラーク・ダンカン)と、かれをめぐる死刑囚棟での出来事を描いた物語である。子ネズミと他の囚人と、小面憎い看守のパーシーが見事な演技で、物語を盛り上げる。

 トム・ハンクスは主任看守。一種のファンタジーだが、人間の最悪な部分から最良の部分まで、どうすることもできない理不尽も含めて、すべて出そろっている。人間の願いが叶う物語だ。奇跡が起きてほしいと願うとき奇跡が起き、悪い奴は正当に罰を受けなければならないと思うときに、罰を受ける。ただ、無垢の善人だけが救われない。

 無実の囚人コーフィは、もうこれ以上生きたくない、疲れたという。「雨の中のスズメのように一人旅に疲れた。旅を共にする友達もなく、どこからどこへ、なぜさまようのかもわからない。醜いことをし合う人間たちにも疲れた。毎日世の中の苦しみを感じ、聞くことにも疲れた」

 監督のフランク・ダラボンはおなじキングの原作『ショーシャンクの空に』(1994)の監督でもある。

7 『アトランティスのこころ』(2001、131分) スコット・ヒックス監督。アンソニー・ホプキンス。子役はアントン・イエルチン。ホープ・デイヴィス、ミカ・ブーレム。この原作もまたスティーヴン・キング。

 これも好きな映画だ。わたしは子どもが主人公の映画(小説も)は好きではないのだが、これは別格である。母子家庭の家にテッド・ブローティガンという謎の老人(アンソニー・ホプキンス)が間借り人になる。母親はうさんくさく思うが、ボビー少年はなつく。この11歳のボビーと老人の交流がいいのだ。ボビーは、母親が死んだ父親のことを悪くいうのを好きではない。

 テッドは未知透視能力をもっているせいで、政府の諜報員から追われている。テッドはボビーを温かく見守り、大人に話すように話をする。ボビーはテッドに祖父のように親しむが、かれがいつかいなくなることを心配する。

 ボビーの幼馴染みのキャロルが、バットを背負った年上のいじめっ子に暴力を振るわれ骨折する。会社の中で地位の上昇を目指す母親は、週末の泊りがけのセミナーに誘われて入れ込むが、会社の上司に暴行される。ボビーがいじめっ子に仕返しをする。キャロルが「ハリーをやっつけたのはあなた? うん、グッド、グッド」という場面がたまらなくいい。すばらしい映画だ。

8 『冒険者たち』(1967、112分) ロベール・アンリコ監督。アラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカス。

 もう最初から最後まで、わたしにとっては、ジョアンナ・シムカスの映画である。

 賞金のために凱旋門を複葉機でくぐりぬけたり、スピードの出るエンジン開発をして特許を取ろうとしたり、博奕をやったりと、一攫千金を夢見るふたりの男は、芽が出ない芸術家の若い女と知り合う。

 3人とも目標を失い、アフリカのコンゴ沖に沈んでいる5億フランの宝石や金貨を探す旅に出る。口笛だけで演奏される主題曲に乗って、船を借りて無邪気に遊ぶ3人の姿がこの映画のクライマックスである。