残る5作品を決めるために、2024年1月15日、推薦委員は都内某所に集結した。オンライン参加も可能だったが、28人中22人が会議室に足を運んだのだから、なかなかの気合だ。九州からこの日に合わせて上京したり(筆者のことである)、京都からの日帰りを強行したり、と遠方からの参加もあった。
選定会議では、委員が順番に自らの推し作品を紹介。1人3分の持ち時間はたいていオーバーし、それだけで約2時間。
オンライン含め26人の会議では、まともに議論していたら収拾がつかない。そこで、すべての説明を聞いた五十嵐委員長が、まず2作を選定した。この2作は推薦時にもそれぞれ3票と2票を獲得しており、異論の出ないところと言える。
残りは、委員長がピックアップした7作を候補として、会議参加者による投票を行った。これがなかなかの接戦で、一度では決まらず、決選投票の末に、ようやく3作が決定した。
ベスト10は自然豊かな郊外立地が多い
選定された「ベスト10」のうち、東京都内の作品は3作で、そのほか関東は千葉県2作、神奈川県1作という結果だ。残る4作は、岡山県、広島県、福岡県、熊本県と、西日本に散らばった。東京23区と岡山市を除けば県庁所在地ですらなく、郊外に立地するものが多い。
設計者のジェンダーバランスは一概には言えないが、代表者に着目すると女性は4人。いずれも男性建築家との共同代表なので、14人中4人ということになる。力のある女性建築家は増えているのだが、数の上ではまだまだという現状が反映されているのかもしれない。
建築の種類は様々だ。住宅は2作で、賃貸集合住宅の「天神町place」(東京都文京区)と、個人住宅ながらベスト10入りした「後藤邸」(神奈川県逗子市)。2023グッドデザイン大賞にも輝いた「52間の縁側」(千葉県八千代市)は介護施設、「学ぶ、学び舎」(東京都小金井市)は東京学芸大学の施設である。
以上4作品はその性格上、誰もが訪問できるわけではないが、残る6作品は見に行ったり体験したりすることが可能だ。以下に少し詳しく紹介しよう。