昨年9月20日、ニューヨークの国連本部で韓国の尹錫悦大統領の演説を聞く金建希夫人昨年9月20日、ニューヨークの国連本部で韓国の尹錫悦大統領の演説を聞く金建希夫人(Yonhap News Agency/共同通信イメージズ)

 総選挙を約2カ月半後に控え、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)非常対策委員長が正面衝突している。表向きの理由は候補公認ルールをめぐる対立とされるが、実際には金建希(キム・ゴンヒ)大統領夫人のスキャンダルに対する立場の決定的な違いだという。

 いま韓国政界では、「尹錫悦政権のアキレス腱は金建希リスク」と囁かれている。韓国国民からの拒否感が強い大統領夫人の存在が、4月の総選挙を左右する最大変数となりつつある。

党の窮地を救ってくれる救世主

 韓東勲非常対策委員長は、尹錫悦大統領の検察時代からの後輩で、尹錫悦政権の初代法務長官を経て、昨年末、「国民の力」の非常対策委員長に任命された。非常対策委員会は、党の臨時執行部で、その委員長は実質的な党代表である。

 韓氏の非常対策委員長任命以前、大統領の支持率は30%台前半からなかなか抜け出せない状態が続いていた。そうした中、金起炫(キム・ギヒョン)党代表が大統領室との対立で突然辞任したことで与党内に危機感が広まった。

 この危機を救ってくれる人物として、党幹部が白羽の矢を立てたのが尹錫悦大統領の信任が厚い韓東勲法務長官だった。

 1973年生まれの韓東勲法務長官は、洗練された保守のエリートを象徴する人物で大衆的な人気を兼ね備えており、大統領府と「国民の力」の支持を得て、昨年末、党の顔に「推戴」されたのだ。