1月9日、ソウルの国会前で政府主導の犬肉禁止法案を支持する集会に参加する動物愛護活動家ら1月9日、ソウルの国会前で政府主導の犬肉禁止法案を支持する集会に参加する動物愛護活動家ら(写真:AP/アフロ)

 韓国でことあるごとに衝突している与党「国民の力」と最大野党「共に民主党」だが、この両党が久しぶりに手を握り合って、国会である法案を可決させた。「犬肉食禁止法案」である。

“犬鍋”は参鶏湯と並び称される栄養補給食

 この法律は動物保護活動家としても知られる金建希(キム・ゴンヒ)大統領夫人が積極的に後押ししていたことで、「金建希法」とも呼ばれている。今後3年間の猶予期間を置いて2027年から施行されるが、施行されれば、犬を食用目的で処理した場合、3年以下の懲役刑・3000万ウォン以下の罰金刑に処されることになる。食用目的で犬を飼育したり流通したりする場合にも懲役2年以下2000万ウォン以下の罰金刑に処される。

 愛犬人口が1500万人にも達するといわれている社会的変化に伴う立法だが、一部では「伝統の食文化まで国家が干渉するのか」という批判的な意見もある。特に関連業者からは「ヒトラーや金正恩より酷い」という強い反発が出ているのだ。

 韓国の人々がなかなか肉が食べられなかった貧しい時代、国民の「保養食」として長い間韓国人に愛されてきた犬肉が歴史の裏道に消えることになった。その時代、気力が尽きて食欲が落ちる夏場や大きな手術などでスタミナ補充が必要な時、貧しい庶民にとって犬肉は最高の栄養補給食だった。とくに“犬鍋”は「補身湯」と呼ばれ、参鶏湯(サムゲタン)と並ぶ夏の保養食として人気を集めてきたのである。

犬食はアジアを中心に世界各地で見られる。写真は北朝鮮の犬肉専門レストランで提供される犬肉料理。2018年撮影犬食はアジアを中心に世界各地で見られる。写真は北朝鮮の犬肉専門レストランで提供される犬肉料理。2018年撮影(写真:AP/アフロ)