- 日本の大企業における「女性活躍」が進まない。日本航空(JAL)では次期社長に女性が就くが、幹部の大部分が男性という会社も少なくない。
- 仕事と家庭の両立支援策は多くの企業が取り入れているが、女性の昇進意欲は高まらず、むしろ「マッチョイズム」が減ることで男性の意欲が向上している。
- 男性幹部は「出世のために頑張ってきた」という自意識が強く、家庭を優先するのは「女性の自己決定」として理解されがちだ。男性優位を招く「平等主義的」選抜が女性活躍を阻んでいる。
(小林祐児:パーソル総合研究所 上席主任研究員)
いまだ大企業幹部は男性ばかり
先日、日本航空(JAL)に4月1日付で初の女性の社長が誕生することが話題になりました。重厚長大系の日本企業では、社長職はおろか部長クラスでもほとんど男性、という企業が多いなか、大きな一歩です。
1986年の男女雇用機会均等法の施行以降、育児休業法から女性活躍推進法にいたるまで、国は女性の会社での活躍を様々なかたちで後押ししてきました。その間に企業も、結婚・出産時の継続就労促進から両立支援、キャリア形成支援などの取り組みを強弱はありつつも進めてきました。
しかし周知のとおり、結果は十分ではありません。いまだに多くの企業で女性管理職比率は低い水準にとどまり、ジェンダーギャップの国際的な順位も低迷し続けています。昨今の「人的資本開示」の動きでも、大手企業の有価証券報告書への男女賃金格差の開示が義務化され、投資家の目線も厳しくなっています。改めて日本企業は自社のエンジンをかけ直さければならない状況です。
女性活躍の最大ハードルは「女性の意欲の無さ」
では、どこで企業の女性活躍推進は滞ってしまうのでしょうか。2022年のパーソル総合研究所の調査によれば、企業が最も課題に感じているのが「女性の昇進意欲の無さ」です。企業の女性管理職の比率ごとに見ても、女性管理職比率の高低にかかわらず、「女性の昇進意欲の無さ」が最も問題となっています。
企業が感じている女性活躍のための課題感
女性管理職比率が高い企業でも女性の管理職志向は低い
確かに上のグラフの通り、女性管理職が多い企業でも、管理職になりたいと思っている女性の割合は男性よりも低い水準にとどまっています。「自社でも女性管理職が増えてくれば、意欲ある女性が増えてくれるはずだ」という見込みは大きく外れてしまうということです。
「登用しようとしても断られてしまう」「女性に意欲が無いのだからしょうがない」「キャリアの方向性は尊重しなければ」…このように「本人の意欲の無さ」は、企業施策をスタックさせていきます。
なぜ、このような状況に陥っているのでしょうか。