1.日本の人気の高まり
コロナ禍の鎮静化を背景に日本を訪れるインバウンド旅行客の増加が目立っている。
2023年1~11月累計では2233万人と依然コロナ前の2019年(2936万人)を2割以上下回っている。
しかし、単月で見ると、10月は252万人(2019年同月比+0.8%)、11月は244万人(同+0.0%)とコロナ前の水準に戻っている。
コロナ前は国別でトップだった中国からの旅行客は、2023年1~11月累計では211万人と2019年比-76.2%、11月単月でも-65.6%と依然低迷が続いているにもかかわらず、訪日客数はここまで回復した。
この間、日本の不動産を購入する外国人の増加も目立つ。
11月にオープンして大きな話題となっている麻布台ヒルズの上層階にある高額マンションは100億~300億円と言われているが、その多くは外国人富裕層が購入したと聞く。
また、豊洲周辺の東京湾を望む高級タワーマンションを購入する人の1~2割が中国人であると報じられている。
このように、訪日旅行でも不動産購入でも日本を好む外国人の増加が目立っている。
これは円安の影響もあって、日本の飲食、宿泊などの旅行代金が外貨建てで大幅に低下していること、不動産が海外主要都市、特に日本から近い、香港、上海、北京等に比べて割安であることが主な理由である。
とはいえ、価格の比較であれば、中国のホテル代は平均的に東京より安価であるほか、ソウルの不動産は東京より割安である。
それにもかかわらず、中国は旅行客の減少に悩んでおり、ソウルの不動産は東京のマンションほど外国人の注目が集まってはいない。
こうした事実から見て、日本の魅力は価格面以外の要素も大きいと考えられる。
中国人の友人に日本の魅力について聞くと、山紫水明で緑豊かな観光地、温泉、食事、低価格ながら良質なサービス、魅力的な各種土産品(日用品、化粧品、医薬品、趣味のグッズ等)など、日本滞在は多くの魅力があると指摘する。
こうした様々な日本の魅力のベースにあるのが、おもてなし、思いやり、交通やホテルなどの規律正しく丁寧なサービスと高い信頼性、そして治安の良さなど日本人の日常的な心遣いや規範である。
これらは日本の伝統精神文化に基づいており、仁義礼智信、慈悲心、利他主義などに基づく人格形成教育がその背景にある。
こうした人格形成を重視する道徳教育は戦後の学校教育における道徳の授業では力点が置かれていない。
しかし、江戸時代に寺子屋や藩校などを通じて広く国民全体に道徳教育が徹底され、それが日本人の心に深く浸透し、日本の精神文化として定着した。
それが今も家庭教育、企業・政府組織における人材教育などを通じて生き残っており、世界中の人々が評価する日本の魅力の土台となっている。