86.3%が独立ではなく「現状維持」を望んでいる台湾
一方、台湾当局が住民におこなった世論調査では、86.3%が独立ではなく「現状維持」を望んでいる。中国も台湾も現状維持を望んでいるとして、中国と台湾をめぐる周辺の国々の動きはどうだろう。筆者は次のように言及する。
トランプ政権は「中国が発展すれば民主的になるとの従来の想定は誤りだった(中略)」と対中強硬姿勢を露骨に示した
バイデン政権は中国との関係改善に舵を切りつつあるが、アメリカの大衆には反中国感情が強くバイデン政権も弱腰との非難に押されて対中強硬姿勢に戻る可能性もある
世論調査では中国を否定的にとらえる意見が80%以上もあったというアメリカ。しかし対中強硬派が台湾独立を支持するのは、台湾の利益と安全のためでなく、急速に発展する中国の勢いを抑えたいという意図がある。
日本が取るべき選択とは?
バイデン政権は対中関係の改善を目指す方向に進んでおり、2023年5月には「(米中関係の)雪解けは近い」との認識を示した。同年6月3日にはオースティン国防長官が「台湾海峡で紛争があれば壊滅的だ」と講演している。
米中は輸出入や投資、融資などで今や切っても切れない関係にあり、台湾有事を発生させることは両国ともに望んでいないだろう。日本の立ち位置についても、筆者はこう主張する。
安全保障と経済の利害損失を考えれば、米中関係の改善がどちらにとっても得策であるのは自明で、日本にとっても喜ばしい
安全保障の要諦はなるべく敵を作らず、戦争を避けることにあることを改めて考え、米中の和解に尽力することが、日本にとり得策と思わざるを得ない
もちろん、米中間で問題は山積している。アメリカ軍の中国沿岸での情報活動や、それに対する中国軍の妨害などでも鋭く対立している。しかし、関係が悪化に向かうよりも改善に向かった方が益が大きく、それは日本にとっても同様だというのが筆者の立場だ。
台湾情勢を巡っては、危機を煽るかのような言説も見られる。まもなく行われる台湾総統選を機に様々な見方を知っておくことは有益かもしれない。