台湾の次のリーダーを決める台湾総統選が1月13日に迫る。その結果は、中国との関係にも影響を与えることになる。2027年までに勃発するとの予想もある「台湾有事」。中国が武力行使に出るリスクが高まっているとされる中、日本はどう備えるべきなのか。今回紹介する『台湾有事 日本の選択』(田岡俊次著、朝日新聞出版)では、ベテランの軍事ジャーナリストが台湾有事という危機を冷静に見据え、解説している。
(東野 望:フリーライター)
ウクライナ侵攻と台湾有事の違いとは
近年の軍事侵攻で記憶に新しいのは、何といってもロシアによるウクライナ侵攻だろう。2022年2月にロシアは「ウクライナ東部のロシア系住民の保護を目的とする特別軍事作戦」を決行すると宣言し、侵攻を開始した。台湾有事と聞くとウクライナ侵攻を連想し、中国とロシアを同じ立ち位置で考えがちだ。しかし元朝日新聞の記者で軍事ジャーナリストの筆者は次のように考える。
日本は台湾を中国の一部であると認めているから、それを分離独立させようとして介入、武力行使をするのは、国際法違反で、まさに今日のロシアがウクライナに対して行っているのと同様の侵略行為だ
「日中共同声明」と「日中平和友好条約」で、日本は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政権である」と認め、「台湾が中国領土の不可分の一部である」という中国の立場を理解し尊重すると定めている。
要するに日本は中国と台湾を「1つの中国」と認めているため、台湾が分離独立を目指して行動を起こせば、中国政府軍が鎮定するのは日本から見ても合法だというわけだ。
中国「反国家分裂法」の本質は「現状維持法」
中国と台湾は、韓国と北朝鮮のような敵対関係ではなく、相互依存関係でともに大きく発展してきた。経済的には多額の輸出入があり、新型コロナウイルス感染症が流行する前は月に1300本以上もの定期航空便が行き来していた。
そんな深い相互依存がある中で台湾有事が起きれば、双方の経済に深刻な影響が出るだろう。それゆえ筆者は、中国で2005年3月に採用された「反国家分裂法」は「現状維持法」だと説く。
中国は現在の状況を「分裂」と認めておらず、台湾が独立を宣言したり、独立派が反対派を虐殺するとか、外国軍を引き込んで分裂を図る、などの「事変」が起きるようなことがない限り、将来の平和統一を目指して協議していく姿勢を示している。「反国家分裂法」の本質は「現状維持法」と思われる