BEAT-UP「~UP-BEAT Complete Singles~」ジャケット写真より

(冬将軍:音楽ライター)

90年代から現在までの、さまざまなヴィジュアル系アーティストにスポットを当て、その魅力やそこに纏わるエピソードを紹介していくコラム。今回は非ヴィジュアル系バンドながらヴィジュアル系シーンへ大きく影響力を与えたUP-BEATを紹介。“ポストBOØWY”と呼ばれながらも、独自のバンドスタイルを切り拓いていたバンドの魅力とは?(JBpress)

多くのヴィジュアル系バンドに影響をもたらす

 ヴィジュアル系というシーンを作った、影響を及ぼしたバンドすべてがヴィジュアル系バンドなのかと言ったらそういうわけでもない。X JAPANやLUNA SEAは一般的にヴィジュアル系のレジェンドとして広く認識されているが、BUCK-TICKはその括りとは一線を置かれていたし、GLAYもその枠に収まりきらないほどの幅広い支持層を得てきた。

 本連載の初回で取り上げたBOØWYもそうだ。私自身、BOØWYをヴィジュアル系の括りに入れるつもりなどない。ただ、彼らが確立した“カッコつけの美学”が後世へのヴィジュアル系シーンへの影響力は計り知れず、ヴィジュアル系史を語る上でBOØWYを起点としたほうがわかりやすいという理由で取り上げた。

 前々回のDEAD ENDもヴィジュアル系バンドなのかといえば違うだろう。しかしながらジャパメタからヴィジュアル系へと移り変わる時代の渦中にいたバンドである。そうやって、ヴィジュアル系シーンへの影響力が大きい非ヴィジュアル系バンドは多くいる。

 今回取り上げるUP-BEATもまたヴィジュアル系シーンへ大きく影響力を与えた非ヴィジュアル系バンドだ。PENICILLINのボーカリスト、HAKUEIやcali≠gariのギタリスト、桜井青など、UP-BEATからの影響を公言するヴィジュアル系バンドマンは多い。

 2ndアルバム『inner ocean』の衝撃。1曲目「Time Bomb」の強靭なビートがダンスビートに変わる「Nervous Breakdown」の流れは鳥肌モノだ。同曲の緻密なギターアレンジにゾクゾクする。本作がリリースされたのは1987年9月15日。10日前の9月5日にBOØWY『PSHYCHOPATH』がリリースされたばかりだった。

 UP-BEATは活動中から“ポストBOØWY”の代表格バンドというイメージを強く持たれてきた。ニューウェイヴ影響下の音楽性はもとより、フロントマンである広石武彦と氷室京介のヘアメイクが同じ人だったということも、そうしたイメージを強くしていた。そして後世では“GLAYの原型”という評価もある。それはなぜだろうか。“ポストBOØWY”と呼ばれながらも、独自のバンドスタイルを切り拓いていたUP-BEATについて紐解いていきたい。