昨年まではジャニーズというもう一つの柱があった。それが使えなくなったいま、テレビはますます芸人たちにおんぶにだっこ状態である。いまや俳優も、お笑い芸人にすり寄る。やめればいいのに、NHKもすり寄る。

 現在、お笑い界の頂点に立っているのはダウンタウンのように見える。以前にも書いたが、多分フジテレビだったと思うが、かれらの送迎に重役たちが車寄せまで立ちあう場面をみて、えらくなったものだと、おどろいたものである。

 だから松本が「俺みたいな金も名誉もある男」とうそぶいた(発言が事実として)、というのもむべなるかなである。その金は、元をただせば企業の宣伝広告費のあぶく銭である。名誉とは大阪万博のアンバサダーに就任したことか。なんでもいいが、松本はふんぞり返るのではなく、「お笑い」で巨万の富を稼げるいい時代に生まれた、と世間に感謝してもいいくらいである。

2025日本万国博覧会誘致委員会の発足式典であいさつするお笑いコンビ「ダウンタウン」(2017年3月27日、写真:時事通信社)2025日本万国博覧会誘致委員会の発足式典であいさつするお笑いコンビ「ダウンタウン」(2017年3月27日、写真:時事通信社)

ブラック職場はなくなっていない

 昨年末のジャニーズの性加害問題で、テレビ局はそれまでの見て見ぬふりをしてきたことを反省し、日本民間放送連盟は大慌てで次のことを決めた(日本民間放送連盟「人権に関する基本姿勢」決定 芸能事務所元代表者の行為への希薄な意識を反省、日刊スポーツ、2023年12月25日)。

1.人権の尊重「民間放送は、人種・民族、性、職業、境遇、信条をはじめ、性的指向・性自認や障害の有無などを理由としたあらゆる差別を認めない。特に、社会的弱者やマイノリティの人々、未成年の人権に配慮し、尊重する。

 個人としての尊厳や人格を不当に傷つけるあらゆるハラスメントやいじめ、長時間労働や健康を害する働き方を強いることを認めない」(このほかに、「2.人権侵害の防止」と「3.メディアとしての社会的責任」があるが、割愛)。