長い年月を経て成熟した「台湾人」としての心
それは単に安倍氏が「反中」政治家であるという単純なものではなく、国際社会で注目を浴びる立場だった安倍氏が、世界が目にする場で「台湾」の存在を認め、発信したからこそ得られた敬意だったのではないかと主張する。
また本書の中では、自身を「台湾人」と思うか、「中国人」と思うかについて聞いた世論調査の結果も紹介されている。1992年の調査開始時には、自身は「台湾人」という回答は17.6%にとどまっており、「中国人」が25.5%、「どちらでもある」が46.4%を占めていた。
それが2023年におこなわれた調査では一変する。自身を「台湾人」だと考えている人の割合は62.8%と大幅に増えたのに対し、「中国人」だと考えている人は2.5%に過ぎず、「どちらでもある」が30.5%を占めている。自身を「台湾人」だと考える者が過半数となり大逆転を果たした。
このアンケートからも分かるように、台湾社会は長きにわたる他国からの支配を乗り越え、「台湾人」として歩みはじめている。その背景には、「台湾」が独自のアイデンティティを育まなければならなくなったさまざまな出来事が積み重なっているのだ。
2024年1月13日には、台湾総統選が実施される。多数派になった「台湾人」はどんな選択をするのか。その歴史に触れながら、「台湾」がなぜ「台湾」であるのか、ぜひ読み解いてほしい。