同性婚の法制化はアジア初、女性議員比率は40%超に

 つまり国際的に不安定な立場に立たされることの多い台湾にとって、少数派を尊重することこそが台湾自身を肯定することにも通じているというのだ。

 この台湾独自のアイデンティティは、2019年にアジアで初めて同性婚を法制化したり、2020年の立法委員(国会議員)選挙で女性議員の比率が40%を超えたりするなど、さまざまな形で台湾社会へ影響を及ぼしている。

 また本書では、台湾社会が世界に求める扱いを安倍晋三元首相が実践していたのではないかという著者の見立てを紹介している。

銃撃事件後、安倍元首相の等身大銅像が建立

 凶弾に倒れた安倍氏の銃撃事件後、台湾では安倍氏の等身大銅像が建立されている。安倍氏は生前、検疫上の問題を理由に台湾から中国へのパイナップル輸入が禁止された際、SNSに台湾パイナップルを手にしてニッコリと笑う写真を投稿した。また、「台湾」の文字を入れずに設立された財団法人「交流協会」を「日本台湾交流協会」に変更するなど、多くの台湾贔屓ともとれる動きをした。

2023年3月に台湾・台北市で開幕した「安倍晋三記念写真展」では蔡英文総統があいさつに立った(写真:ロイター=共同)2023年3月に台湾・台北市で開幕した「安倍晋三記念写真展」では蔡英文総統があいさつに立った(写真:ロイター=共同)

 一方で著者は安倍氏による多くの「親台湾・反中国」ともとれる行動を振り返りつつ、次のように述べている。

ここでさらに思い起こさなければならないのは、在任中の安倍政権は中国との関係改善も追求してきた政権だったということである。

 ではなぜ台湾社会は安倍氏に強い親しみを感じていたのか。