年末の福引抽せん会年末の福引抽せん会(写真はイメージ)

篠原 拓也:ニッセイ基礎研究所主席研究員

 早いもので、今年も残すところ2週間となった。この時期、各地の商店街やショッピングモールなどでは、歳末のセールとともに「福引大抽せん会」といった催しが行われる。セール期間中に商店街の店で買い物をすると福引券がもらえて、それを抽せん所に持っていくと、券の枚数に応じて何回か抽せんができる、といったものだ。

 抽せんの仕方は、箱に手を突っ込んで三角くじを取り出すタイプや、回転式の抽せん器をガラガラと回して色のついた球を出すタイプなどさまざまだ。最近では、タブレット型端末の画面で、くじのスタート・ストップのボタンを押すタイプも増えており、こんなところにもデジタル化の波が押しよせてきている。

 抽せんの1等景品は、薄型テレビや自転車だったり、商店街で使うことができる1万円分の買い物券だったりする。賞は、だいたい4等や5等まであって、ティッシュペーパーやミニタオルなどが景品とされていることも多い。「空くじなし」として、抽せんをした人には、必ず何らかの景品が当たる仕組みになっているものもよく見かける。

 今回は、この福引抽せん会について、少し見ていくことにしよう。

景品の最高金額は法令上「30万円まで」とされている

 まず、法律や税金の面から見ていく。

 商店街で行われる福引抽せん会のように複数の事業者が参加して行う懸賞は、法令上「共同懸賞」と呼ばれ、景品表示法の規制対象とされている。共同懸賞の場合、景品の最高額は取引価額にかかわらず、30万円までと定められている。

 このため、例えば、「豪華クルーズ客船で巡る世界一周の旅」や「地球環境にやさしい最新鋭電気自動車」といった30万円を超えるものは景品にすることができない。

 また、共同懸賞の場合には最高額とともに、景品全体の総額についても規制がされていて、懸賞に係る売り上げ予定総額の3%が上限とされている。

 個人が福引抽せん会で獲得した景品は、課税上、一時所得という扱いになる。一時所得の金額は、総収入金額から収入を得るために支出した金額と特別控除額(最大50万円)を控除した金額となる。そして、その2分の1が課税対象となり、給与所得など他の所得の金額と合計して総所得金額を求めてから、納税額が計算される(総合課税)。

 つまり、仮に50万円以上の賞金を受け取ると所得税が課税される可能性があるのだ。だが、商店街で行われる福引抽せん会の場合は、景品の最高額は30万円までなので、1本当てただけではこれに達することはない。