2023年11月30日に死去したヘンリー・キッシンジャー元米国務長官(2015年6月、写真:AP/アフロ)

 在日コリアン3世の韓光勲(はん・かんふん)氏が30歳にして韓国に初留学した。大阪で生まれ育ち、新聞記者として活躍した韓氏が、“異国”での体験と発見を綴る本連載。今回は米国のキッシンジャーに揺り動かされた韓国の知られざる歴史を、韓氏が紹介する。(JBpress)

(韓光勲:在日コリアン3世ライター)

 2023年11月30日、米国のニクソン政権で国務長官を務め、米中の国交正常化に大きな役割を果たしたヘンリー・キッシンジャーが亡くなった。100歳の大往生だった。

 ドイツでユダヤ人の家庭に生まれたキッシンジャーはナチスの迫害を逃れ、1938年に米国に渡った。第2次世界大戦では米軍でドイツ語の通訳を務めた。戦後、ハーバード大学で国際関係学の博士号を取得。1960年代後半から70年代にかけて、ニクソン政権とフォード政権で国務長官などを務めた。

 1971年に中国の周恩来首相と秘密交渉を行い、1972年のニクソン大統領の中国訪問につなげた。急激に進んだ米中和解は、米国の同盟国にも大きな衝撃を与え、「ニクソン・ショック」とも呼ばれた。