大量の砂利流入で、懸念されるダムの容量減少

 当時の人は今よりだいぶ身長が低かったから、これは相当な深さだ。しかも増水すれば流れは速かったであろうから、よく渡ったものだと感心する。現地で聞いた話だが、お客さんを絶対に濡らしてはいけないという決まりがあり、万一濡らしてしまった場合は打ち首という話まで伝わっている。人足はどこを通れば安全に渡河できるか熟知していた職人集団だったとのこと。

 その島田から大井川に沿って上ると、いくつものダムと発電所を見ることができる(以下、地名が幾つか出てくるが、流域のマップをご覧になりたい方は大井川水系用水現況図を参照されたい)。

 今回、訪れたのは、深い山の中にある井川ダムだ。蓄えられた水は、2本の太い鉄製の水圧鉄管を通り、ダム直下にある井川発電所(中部電力)で発電に利用される。1本あたり最大で毎秒40トンもの水が通る。この水がいくつかの導水路と発電所を経て川に戻るのは、ずっと下流の川口発電所(中部電力)を過ぎてからである。

大井川の下流にある川口発電所の水車に水を供給する水圧鉄管。直径5メートルほどある。最大で毎秒90トンの水がこの中を通る。川口発電所は出力5万8000キロワット。筆者撮影大井川の下流にある川口発電所の水車に水を供給する水圧鉄管。直径5メートルほどある。最大で毎秒90トンの水がこの中を通る。川口発電所は出力5万8000キロワット。筆者撮影

 大井川本流の方はといえば、井川発電所より下流は生態系を維持するための維持流量が保たれている。訪れた時は降水量が少ないタイミングだったこともあって、毎秒5トン程度の流量しかなかった。浅いので筆者でも簡単に歩いて川を渡れそうだ。

 水が少ないと川としては物足りない。かつては維持流量を保つということをしておらず、大井川の中流域では、本流に水が一切流れていない「河原砂漠」になっていたときがあった。だがその後、地元の人々による「水返せ運動」が起こり、結果として維持流量が放出されるようになった。

 河川敷はとても広く、砂利が大量に積もっている。それを採集しているパワーショベルやダンプカーがところどころで動いていた。大井川の上流は南アルプスの急峻な地形であり、いつも大量の砂利が流れ込む。1年で90万立方メートルという莫大な量だ。

 砂利の比重は1.7トンぐらいだから、これは150万トン。つまり1日あたり4000トン、1時間あたりだと170トンになる。大きな10トントラックが3分ごとにいっぱいになる勘定だ。これが流れ込むため、支川の寸又川では9割方が埋まってしまったダムがいくつかある。今後も、ダムの容量が減ることが懸念されている