突然怒り出す迷惑客、無料提示に「ニヤリ」
ホテルや旅館の現場からは、「従業員を長時間拘束し苦情を繰り返す」「不当な割引やグレードの変更を要求された」「過剰なサービスを行うように繰り返し求められた」など、さまざまな声が噴出している。
ここで筆者がホテルでの苦情やトラブルについて取材を続けてきた中で出てきたひどい事例をいくつか紹介したい。
とあるホテルに訪れたのは30代後半のカップル。当日朝10時に予約もなしにたくさんの荷物を持って「すぐに部屋へ入れるようにしてほしい」と宿泊を希望。ホテルスタッフが事前予約なしでは難しい旨を伝えると突然激高したという。
やむを得ず空いている部屋に通した直後、今度は「タクシーを呼んでほしい」との連絡があったという。ところがタクシーが到着して連絡しても部屋から出てこず、乗ったのはなんと50分後だった。
翌日はチェックアウトの延長を繰り返して延泊。さらにその翌日もチェックアウトの時間になっても部屋から出てこないため、電話をすると「自分はいつもどのホテルでもレイトチェックアウトにしてもらっている」と身勝手な理由で恫喝してきたという。
結局、延長料金を支払うことで13時まで延長となったが、やはり部屋から出てこない。責任者が出向くと、さらに30分延ばすと言う。最終的に夕方になってやっとチェックアウトしたが、その際にも「食事をしてくるから荷物を預かってほしい」と言われ、実際に荷物を受け取りに来たのは、翌日だったという。
取材に答えてくれた担当者は、「最初にトラブルが発生した時点で宿泊をお断りすべきだった」と話していた。
これは極端に悪質なケースだが、こうした無茶苦茶な「要求系」のほか、難癖をつけて「部屋をアップグレードしてほしい」と主張する客や、スタッフのサービスなどにクレームをつけて宿泊代の無料を暗に要求する迷惑客もよくいるという。
先日、北関東にあるホテル支配人から聞いた話もまさに“無料要求系”だった。
夫婦でチェックインした宿泊客が翌日になって「部屋の掃除ができていない」「ベッドの質が悪い」など、大声であることないことをレセプションカウンターにてぶちまけたという。ホテルの支配人が別室に通して話を聞くも、客の怒りはおさまらない。そんなやりとりが2時間近く続いたという。
そして、業務への支障も感じたため、「今回の宿泊代は結構です」と伝えた瞬間、夫婦は“ニヤリ”。その光景が忘れられないと支配人は悔しそうに話す。