地雷やドローンほど安上がりで、効果的な武器はない

 11月20日で81歳になる米国史上最高齢の大統領バイデン氏は弱々しく見える。第3四半期の成長率が5%近くになったことについてジャネット・イエレン米財務長官は「強い数字だ。景気後退を回避できそうだ」と胸を張るが、食料とエネルギーを除いたコアCPI(消費者物価指数)は4%と高止まり、住宅ローン金利は8%に達し、有権者の生活は苦しい。

 トランプ氏は「大統領に返り咲いた暁にはウラジーミル・プーチン露大統領とゼレンスキー氏の取引を成立させ、戦争を24時間以内に終わらせる」と豪語している。トランプ氏はかつてモスクワのホテルで複数の売春婦に変態プレーをさせていた現場を隠し撮りされ、ロシア情報機関の操り人形になっているとの疑惑が取り沙汰されたことがある。

 武器も資金も米欧に丸抱え、自国兵士の損傷が積み上がる状況で戦争は続けられない。トランプ氏返り咲きの可能性はゼレンスキー氏に当たり前の現実を突き付けている。

 狡猾なプーチンは結論を急ぐ必要はない。米大統領選の結果が出るまで、国民に不人気な追加動員を避けながら時間を稼げばいい。その目的を達成するのに地雷やドローンほど安上がりで、効果的な武器はない。

 欧州のシンクタンク、欧州外交問題評議会(ECFR)の報告書「いいとこ取りの世界を生きる」(10月11日発行)は「世界は安全保障面で米国主導のブロックとより緊密に協力することを好むが、経済面では中国との協力を好む。西側以外の国では、たとえキーウが領土奪還を断念することになっても戦争を一刻も早く終結させたいと願う人が多い」と分析する。