11月7日、会見を開いた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長11月7日、会見を開いた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長(写真:AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 二枚舌とは、まさにこのことだろう。統一教会(現・世界平和統一家庭連合)が7日に開いた会見のことだ。

 政府による解散命令請求を受けてから初めて会見に臨んだ田中富広会長は、その冒頭で「私たちの不足さゆえに心を痛めておられる皆様、また辛い思いをしてこられた2世の皆様、そして国民の皆様に、改めて心からお詫びいたします」と明言して、深々と頭を下げたはずだった。ところが、あとの記者からの問いかけに、「組織的に問題を引き起こしたわけではない」として、これは「謝罪ではない」と説明してのけたのだ。

 さらに、解散命令が確定して元信者らへの被害補償が必要になった場合の原資として、最大100億円を国に預ける意向を表明するも、解散命令請求に対しては徹底的に争う姿勢を示した。

 これを「二枚舌」でなくして、なんとするのか。そこに、いわゆる「カルト」の正体が見て取れる。

過去の「行き過ぎ」は教団ではなく信者のせい?

 その会見の内容を具体的に見ていこう。

 田中会長は会見の冒頭で、文部科学省が解散命令請求を東京地方裁判所に行ったことについて、こう述べている。

「伝道者の説明が不足していたとか、あるいは献金に際し、家庭事情、あるいは経済的状況に対して、配慮が不足していたなど、当法人の指導が行き渡らず、不足なこと故に、今まで辛い思いをされてこられた皆様方に率直にお詫びしなければならないと考えております。

 また、親の信仰の熱心さ故に寂しい思いをしたり、また経済的に苦しい思いをしたという2世の皆さんの訴えもございました。

 個々の事情はさまざまで、全てが信仰ゆえの問題とはいえないかもしれませんが、いかなることがあっても、宗教法人として1人の苦情があってはならないと考えていますし、ましてやこの度は、国と国民の皆さまを巻き込んでの、このような事態に至ったことに関しては、深く反省いたしております。

 本日この場をお借りいたしまして、私たちの不足さゆえに心を痛めておられる皆様、また辛い思いをしてこられた2世の皆様、そして国民の皆様に、改めて心からお詫びいたします」

 ここでいったん手にしたマイクを置くと、10秒近く深々と頭を下げた。

 ところがだった。その舌の根も乾かぬうちに、こう言い出したのだ。

「確かに過去、当法人の信者の中に、社会通念から見て行き過ぎた行動をしたことはあったのかもしれません。

 ただ、それも決して私利私欲を求めて行動したのではなく、ご本人なりに相手のためを思って行ったことと信じております」