(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年10月18日付)

米国は中国に気を取られ過ぎているのかもしれない

 本稿の執筆時点で、米国はエジプトに大使を置いていない。現地の業務は代理大使が行っている。

 正式な大使の候補者は決まっているが、ワシントンの人々が「上院承認プロセス」と呼ぶシュールレアリスムの舞台に出てから7カ月目に入っているからだ。

 この候補者には仲間が大勢いる。

 米国大使の任命はクウェート、オマーン、そして(早期の着任を求める圧力のある)イスラエルについても同様な遅れが生じている。

 当然ながら米国は、サヘル地方やその周辺の統治されていない地帯など、中東以外の国や地域でも心配事を抱えている。

 だが、ナイジェリアやジブチにも正式な大使はいない。

 ひょっとしたら、南の国境に中南米から移民がたびたび押し寄せて来るやら何やらで、西半球の政治に気を取られているのかもしれない。

 だが、多くの移民の故郷であるコロンビアにも米国大使はいない。ペルーにもいないし、グアテマラにもいない。

アジアへのピボット時代の終わり

 インド太平洋地域はこれとは対照的で、しばらく前から人材が十分に配置されている。

 マレーシアはこの地域では珍しい、正式な米国大使がまだいない大きな国の一つだ。

 米国と中国の競争が繰り広げられる地域だけに、ワシントンにためらいはない。経済と軍事の面で米国の最大の挑戦者である中国には、かなりの人数を割いている。

 中東でのさまざまな事件が示しているように、このような一つの国や地域への集中は長続きしない。