(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年10月12日付)

テロを厳しく批判することと、その根本的な原因の解決に取り組むこととの間に矛盾はない。
ハマスの獣のような残酷さがさらにひどくなったという指摘と、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエルはハマスに代わる非暴力的なパレスチナ人勢力を兵糧攻めにしてきたという指摘は、どちらも正しい。
米国のジョー・バイデン大統領は10日、1つ目の指摘について怒りの感情をあらわにした。
2つ目の指摘については、公の場では認めていない。
バイデン氏がネタニヤフ氏に対し、パレスチナ人をひとまとめに罰するやり方には強く反対すると明言してくれることを世界は期待しなければならないが、当然そうなると決めてかかることはできない。
イスラエルの対応と米国にとっての危険
イスラエルの対応において、米国は深刻な危険に直面している。
米国は中東で戦争が起きるリスクに加え、イスラエル国防軍のあらゆるやり過ぎについて、世界中から非難を浴びることになるだろう。
ネタニヤフ氏がオスロ合意(1993年に成立したパレスチナ暫定自治協定)に立て続けに違反しても、米国政府はずっと見て見ぬふりをしてきた。
占領地への新規の入植、以前からの入植地の拡大、そしてパレスチナ自治政府への締め付けは、穏健なパレスチナ人のプライドに傷を付け、米国がイスラエル寄りの仲介役であることをあらわにした。
米国が二国家解決に向けた交渉に挑戦したのは、バラク・オバマ大統領の政権下が最後だ。
15年も前の中途半端な取り組みで、やれるものならやってみろとネタニヤフ氏に凄まれたオバマ氏はあきらめた。
ドナルド・トランプ氏は、二国家解決へのプロセスをますますおおっぴらに軽蔑するようになったネタニヤフ氏のチアリーダーになった。
そしてバイデン氏は、パレスチナ問題などもう存在しないかのごとく振る舞ってきた。