(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年9月29日付)

時折、道徳的な悟りは稲妻のように訪れる。
今年8月、南アフリカでそのような落雷があった。
ナイジェリアの偉大な文人でノーベル文学賞受賞者のウォーレ・ショインカ氏(89)がステレンボッシュ大学の学生たちからウクライナ戦争についての見解を問われた時のことだ。
中立の立場は建前だけ
公式見解としては、南アフリカはこの戦争について中立の立場を保とうとしてきた。
だが、多くの若手を含む与党・アフリカ民族会議(ANC)の一部メンバーは公然とロシアの味方をした。
昨年、ANC青年同盟が送り込んだ使節団は、ウクライナ東部、南部4州でのインチキ住民投票は「美しく素晴らしいプロセス」だったと宣言した。
これは党内の年配政治家がわざわざ正す必要もないと判断したナンセンスだった。
1990年から南アフリカ労働組合会議(COSATU)とともにANCと3者同盟を組んでいる南アフリカ共産党は決まって、ロシアによるウクライナ侵攻を「NATO(北大西洋条約機構)が誘発した戦争」と呼ぶ。
今年2月にはロシアの侵略行為を記念するかのごとく、南アは自国沖合でロシア、中国両国との海軍合同演習を実施した。
また、急進左派の「経済的解放の闘士(EFF)」の党首で、ANCに連立パートナーが必要になった場合には未来の南ア副大統領になる可能性があるジュリアス・マレマ氏は、アンチ西側の姿勢をロシアへの忠誠と同一視している。
同氏は今年、ある集会で「我々はプーチンであり、プーチンは我々だ」と語った。