政府は10月2日に「こども未来戦略会議」の7回目の会合を開き、「異次元の少子化対策」の予算と財源について議論した。6月には「こども未来戦略方針」を策定。2024年度からの3年間を少子化対策の集中取組み期間と設定し、年に3兆5000億円の予算を追加する考えを明らかにしている。
どうすれば、この国の子育て支援政策は成果をあげることができるのか。『日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来』(集英社新書)を上梓した前明石市長で弁護士の泉房穂氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──泉さんは明石市長時代(2011年5月1日〜2023年4月30日)、少子化対策・子育て支援に力を入れ、所得制限なしの5つの無料化(「18歳までの医療費」「第2子以降の保育費」「おむつ定期便」「中学校給食費」「公共施設の遊び場」などの無料化)を展開。10年連続の人口増、8年連続の税収増を実現しました。なぜこういった項目を無料にしたいと考えたのでしょうか。
泉房穂氏(以下、泉):政治は、市民の生活を支えるものです。市民の皆さんからいただいている税金や保険料がありますから、特に子育てでたいへんな世帯にはしっかり支援する必要があります。
所得制限なしの5つの無料化を掲げ、順に無償化していきましたが、それだけでなく、子どもの預かり保育などを含めた様々な子育て支援施策を展開しました。
その結果、明石市は子育て世代に選ばれる街になり、住民は明石を離れなくなりました。「明石に住みたい」と周辺の方々もどんどん移住してくれたんです。
私の市長時代に人口は5%増えました。これは、人口が20万人から70万人の中核市の中における全国1位の人口増加率です。
──子育て支援の施策を始めてから、結果が出始めるまでにはどれくらい時間がかかりましたか?
泉:市長を12年間(3期)やりましたが、最初の5、6年間はなかなか目に見える形で成果が出ず、シンドイ時代でした。でも、これを越えたあたりから状況が大きく変わり、市民の皆様から「助かっています」「明石に住みたい」という声をいただくようになった。
ただ、成果が出る前も自信を失ったことはありませんでした。やれば成果につながるはずだと確信していたからです。
政治は博打ではありません。必要な施策を見極めて、市民に安心と結果を届けることが政治です。私は12年前に最初に市長選に出た時から、「これからは子どもです」と言い続けてきた。
日本という国が極端に子どもに対して冷たい国だから、子どもの貧困を含む様々な問題が発生している。日本は、子どもに対して海外の国の半分くらいしか予算を使っていません。
子どもに使うお金を他の国並みにする。かける予算を2倍にして、職員も子どもに寄り添う。私はその必要性を最初から主張し続けてきました。子どもを大事にする取り組みを充実させれば、子どもも、子どもを抱える世帯も、そういった世帯を抱える街も幸せになる。
子どもを応援すれば経済が回る。これは、ヨーロッパなど他の国々でもやっていることです。日本だけができていないから、日本だけがシンドイ状況になっている。私が変わったことをしたのではなく、日本ももっと他の国と同じことをすればいいのです。