菅直人首相による浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の全面停止要請を受け入れることを決めた中部電力。発電電力量の約15%(2010年度実績)を占める重要な電源を失い、需要がピークに達する夏場に向けて需給がひっ迫するのは確実。

 供給不足に陥ることを避けるため、休止している火力発電所の再稼働や他電力会社へ電力融通を要請するなどの手段を検討しているが、供給、財務面での負担は重い。

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 中電の水野明久社長は11日午後、政府による浜岡原発停止の要請を受諾したのち、はじめて海江田万里経済産業省と会談。電力確保への協力や追加的な費用負担に対する支援を要請したが、国から具体的な支援内容を取り付けることが急務となっている。

 廃炉となった浜岡原発1、2号機を除いた3~5号機の合計出力は361万7000キロワット。東電への応援融通をやめ、武豊火力3号機を再稼働させても、夏場のピークには最大電力から供給力を引いた供給予備力は55万キロワットしかなく、「何かトラブルがあって1つでも発電所がとまれば、たちまち供給不足となる」(中電幹部)という綱渡りの状況だ。

 原発停止分を全て火力で補うと、追加で約400万トンの液化天然ガス(LNG)が必要になる計算だ。10年度実績で約1045万トンのLNGを使用しており、その4割にものぼる追加調達は容易ではない。

 三田敏雄会長は5月7日、政府からの浜岡原発停止要請への対応を協議するため開催された臨時取締役会後、すぐにカタールへ飛んだ。LNGの主要調達国で、25年の長期契約を結んでいるカタールのエネルギー相から追加調達についての協力を取り付けた。ある中電幹部は、「調達量については、おおよそメドはついた。問題はどうやって運ぶ調整をするかだ」と話す。

 LNGの運搬や運搬船の配船、基地での受け入れ――など、一連の調整は簡単にできるものではない。電力、ガス会社は年間単位で受け入れる時期や量などを決めている場合が多い。中電は自社専用のLNG船を持っていないので、特にその調整は難しい。LNGはマイナス162度の超低温で液化するため、専用船でなければ運べない事情が背景にある。