トヨタ自動車が発表したグループ再編は劇的な内容だった。ところが、「なぜこの時期に」「なぜトヨタ車体と関東自動車工業を上場廃止に」「なぜ両社を完全子会社に」「なぜ東北の3子会社を統合させるのか」と、トヨタ流に「なぜ」を繰り返しても、トヨタが目的と掲げる「国内生産300万台死守」までの道筋が、今ひとつはっきりとしない。

 確かにトヨタは会見でそれぞれの「なぜ」について答えてはいる。時期については「昨年策定した国内生産の方向性に沿って検討を重ねた結果、この時期になった」。

 トヨタ車体と関東自動車工業の上場廃止と完全子会社化については「トヨタ車体はミニバンや商用車、関東自動車工業はコンパクト車両の専門性を高める。部品の共通化などをそれぞれが主体を持って進め、価格競争力を高める」。

 東北地方の3子会社の統合については「東北を中部、九州に次ぐトヨタ第3の国内生産拠点とする。そのために3社が経営統合し、コンパクト車の企画開発からユニット部品生産、さらに海外事業支援業務まで含めた総合車両メーカーを目指す」とした。

 それぞれの答えはもっともだ。言葉としては理解できる。しかし円高など極めて激しい逆風が吹き荒れる中、それらの手法と「国内生産300万台死守」の間には具体的な因果関係が隠れているはずだ。

 4つの「なぜ」について、因果関係を探ってみた。

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 まず、「再編劇はなぜこの時期なのか」。その答えは「トヨタが国政に見切りを付けたタイミング」と推察できる。震災発生から約4カ月。政府による復旧復興の動きは遅い。一方、トヨタの経営の足かせになる円高は止まらない。海外を見ると国が民間企業を側面支援し、経済成長しているケースもある。トヨタは我慢の限界に達したと見ることができる。