結婚は、いくらがんばっても束縛になる

 土曜日の朝、ジヨンさんはベッドに横たわったまま、なんの予定もない週末の計画を立てています。

「今日は大掃除をしてから映画でも観ようかな」

 以前はそんなことはなかったのに、最近は週末になるのが本当に嫌です。一生結婚しないで一緒に楽しく過ごそうと言っていた女友だちは、ひとり、ふたりと結婚式の招待状を送ってよこすようになり、ほぼ全員が結婚してしまいました。

 そんな友人たちは、最近は会うたびに「結婚なんてしなければよかった。ジヨンはひとりで生きたほうがいいよ」と言っては夫や嫁ぎ先の悪口に夢中です。

 それなのに本格的に遊べる時間ができると、時計をちらちら見ながら、夫が待っているからとさっさと帰ってしまうし、週末に暇だから電話でもしようものならさまざまな口実を使って、また今度会おうね、と言ってきます。ジヨンさんは、二度と自分からは電話をしないと心に誓いました。

「そうだ、今日の夕方はヘウォン姉さんの結婚式だ!」

 ヘウォン姉さんは、ジヨンさんが幼いときから尊敬してきた従姉です。50歳になるまでひとり暮らしをしながら、仕事と人生を楽しんできたカッコいい姉さん。

 会うたびに「わたしはこんなふうにひとりで暮らすのが気楽。ときどき恋愛でもしながら」と徹底した独身主義を貫いていたのに、その姉さんが結婚すると言うのです。

 男性はさほどカッコいいわけでもなく、なにがそんなにいいのか……。でも不思議なのは、どことなく冷たくとがって見えた姉さんが、以前よりもずっと柔らかくなり、きれいになったことです。

 結婚の連絡は衝撃でしたが、とにかく土曜の夕方に出かける所ができたのは幸いだと思いました。

 ベッドの上でごろごろしながら、ジヨンさんは一瞬、ほかの人たちみたいに結婚というものをしてみようかと思いました。そうでなくとも最近は年齢が顔に現われはじめ、陽が沈むとがらんとした部屋に水が押し寄せるかのようにさびしさが訪れる日が多くなりました。しかし、すぐに頭を振って思い直します。

「結婚だなんて、どうしたっていうの。毎日のようにつまらないことでいがみ合う両親を見て、あんなふうに喧嘩ばかりしてるのになんで結婚したんだろうって思ったのは一度や二度じゃないのに……」

 自分のことだけで精一杯なのに、横であれこれ要求する面倒なコブができると思ったら、うんざりです。やはりジヨンさんにとって結婚は、考えただけでも息が詰まるものなのです。

「わたしは束縛されながら生きるのは嫌。まして、わたしみたいに怠け者として知られた人間が耐えられるわけがないでしょ? たぶんわたしと結婚する人も、わたしに我慢がならなくなるはず。それに一緒に暮らしながら、いつ心変わりするかわからないというのに、ひとりの人にわたしの人生を賭けられるわけないじゃない? そのうえ子どもでも産んだものなら、だれが子どもを育てるの? ああ、ぞっとする。そうよ、結婚なんて絶対にだめ」

 こうやって整理して考えると、心が軽くなりました。のどかな土曜日です。