久山町で実現したヘルシーな人口増

 久山町では、2000年から2020年の20年で人口が20%近く増加した。しかも、久山町では2016年から人口が増えているだけでなく、高齢化率も減少に転じている。高齢化が進む日本において、高齢化率を減らしながら人口を増やすのは簡単ではないが、それを実現しているのだ。

 それでは、なぜ久山町ではヘルシーな人口増が可能になっているのか。西村町長の言葉を借りれば、その理由は「団塊の世代の流入が限定的だったから」。

 大都市圏やその周辺の自治体はどこもそうだが、第二次大戦の後に生まれた「団塊の世代」が持ち家を取得し始めた1970年代以降、全国各地で住宅開発が加速した。新設住宅着工戸数も、2000年代後半までは100万戸超が当たり前だった。

1970年代以降、ニュータウンの造成が進んだ。写真は岡山県が着工したマンモス団地の「山陽団地」(写真:山陽新聞/共同通信イメージズ)

 こういった人口増は自治体にとっては税収の増加につながるが、一時期の住民の大量流入はその自治体の人口構成をゆがめてしまう。事実、団塊の世代やその下の世代が流入した自治体は、高齢化率の上昇に直面し始めている。

 久山町も博多至近のロケーションのため、人口が流入する素地はあったが、開発規制がかかっており、住宅開発が可能な場所がそもそも少ない。それゆえに、ほかのベッドタウンと比べて、特定の世代の大量流入が抑制されたのだ。

 九州経済調査会が発表したレポートによれば、2050年時点で人口増加が見込まれている福岡県の市町村は、福岡市博多区、福岡市中央区、福岡県福津市、福岡県新宮町、福岡県久山町の5自治体のみ(2020年との比較)。それも、半世紀にわたる計画的なまちづくりの結果である。