通信半導体の開発は困難

 一方、通信半導体は開発が非常に難しいとされており、世界には製造できる企業がほんのわずかしかないと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。例えば、クアルコム、台湾聯発科技(メディアテック)、韓国サムスン電子などにとどまるという。

 クアルコムとアップルは、特許使用料を巡り長期にわたる法的闘争を繰り広げ、19年に和解した経緯がある。このとき、両社は長期の特許ライセンス契約と供給契約を結んだ。しかし、この年アップルは、米インテルから通信半導体事業を10億ドル(約1500億円)で買収し、約2200人の従業員と特許資産を獲得した。アップルはそれ以降、クアルコム依存からの脱却を目指してきた。

 米CNBCによると、クアルコムにとって、アップルとの契約延長は携帯電話向け事業の業績を後押しすることを意味する。その23年4~6月期の売上高は52億6000万ドル(約7700億円)だった。

クアルコムの売上高、徐々に減少へ

 スイス金融大手UBSの推計によると、クアルコムの22会計年度の売上高、442億ドル(約6兆4900億円)のうち、約21%がアップルからのものだった。ロイター通信によれば、クアルコムは今回、19年にアップルと締結した特許ライセンス契約も継続することを明らかにした。この契約は25年に満了となるが、両社には2年間延長するオプションがあるという。

 ただし、今回の契約をもってしても、今後、クアルコムの売上は徐々に減少していくとみられている。アップルが自社通信半導体への取り組みを継続するからだ。クアルコムも、今回の契約の最終年に当たる26年には、iPhone全体に占めるクアルコム製通信半導体の比率が2割にまで低下すると予測している。