NHK大河ドラマ『どうする家康』で、新しい歴史解釈を取り入れながらの演出が話題になっている。第34回「豊臣の花嫁」では、徳川家康が一向に上洛に応じないことにしびれを切らした秀吉が、自らの妹、朝日姫を家康の正室に送り込んできた。さらに秀吉の母まで人質として送ってくるというから、家康もいよいよ無視できなくなり……。今回の見所について『なにかと人間くさい徳川将軍』の著者で、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
秀吉が妹を家康に差し出したワケ
徳川家康は、築山殿と朝日姫という2人の正室を持ったが、いずれも死別している。
築山殿は家康が37歳の時に自害に追い込まれて死亡。朝日姫については、家康が48歳のときに病死したとされている。築山殿と朝日姫が悲劇的な死を迎えたからだろうか。16人の側室を持ちながらも(人数については諸説あり)、家康が正室を取ることは二度となかった。
今回放送された第34回「豊臣の花嫁」では、家康の2人目の正妻である朝日姫がクローズアップされることになった。朝日姫は豊臣秀吉の妹であり、いわゆる政略結婚だが、このときについていえば、人質としての意味合いが強かった。
「小牧長久手の戦い」では、秀吉と家康が正面から衝突したものの、家康を担いだ織田信雄が秀吉と和睦。実質的に秀吉の勝利に終わった。家康は秀吉の求めに応じて、次男の於義伊(おぎい)を養子として差し出している。
それにもかかわらず、なぜ勝利した秀吉のほうから、家康側に自分の妹を人質として送る必要があったのか。そのあたりの背景もドラマでは説明されている。
上洛して秀吉に従属せよ、と家康に勧める浜野謙太演じる織田信雄に対して、同席した大森南朋演じる酒井忠次がこう言っている。
「我々は関白を信用できません。上洛すれば、殺されぬとも限りません」
それに対して信雄はしばし考え込んでから、「では、関白が人質を出せば上洛するか? 上洛するんじゃな?」となんだかうれしそうである。実際にドラマのようなやりとりがあったのかはわからないが、家康の上洛を促すために、秀吉側から人質として送られてきたのが、朝日姫であった。