予算・人員が潤沢なわけではない
最後に、仙台市は街路樹に携わる人員が多く、管理予算が潤沢にあることによって、維持管理がうまくいっているのではないか、という質問を投げたところ、これについては明確に否定された。
「仙台市の街路樹の維持管理に関しては、担当者の人員が多いわけではありませんし、予算も限られています。その中でできることを実施しています。また、街路樹の維持管理費には高木の剪定費のほかに中低木の刈込や除草の費用も含まれています」
なお仙台市は他の市に比べて中低木の数が多いとのことだ。街中を歩くと大木が目に付くので意外な話だった。
以上の質問への回答から、仙台市が良好な街路樹の維持管理を行い得ている理由が見えてきた。そこからさらに二つのことを聞いてみた。一つは政策の継続性について、もう一つは仙台市の取り組みの応用可能性についてである。
街路樹政策の変更はあるか
他の自治体では、市長の交代が都市政策に影響を与えることがよくある。仙台市では、今後、市長の方針転換や、市長の交代などで、制度の変更や改正が起こり、これまでの街路樹管理の方針がひっくり返る可能性はあるのだろうか。
この質問に対しては、次のような回答があった。
「他都市にはない本市の都市ブランドであることや、市民意識調査の結果からわかるように、本市のみどりは市民が魅力的と感じていることを考えても、本市の街路樹に関する方針が大きく変わるようなことはないと考えています」
その一方で、他の自治体と同様に、古い住宅街では樹齢を重ねて大木になった街路樹を伐ってほしいという声もあるとのことだ。
では、こうした仙台市の優れた取り組みは他の市町村に応用できるのだろうか。ハードルがあるとしたら何だろうか。
これについては、「街路樹マニュアル」の存在が大きいとのことだった。他の自治体でも同様のものを作ることはできるだろうが、それが定着するか否かは、自治体として市民に理解してもらえるような方針を示すことができるか、また市民に街路樹保全の意識が生まれるかどうかが鍵となるとのことだ。