過度な伐採・強剪定をどう見るか

 以上、仙台市の取り組みについて詳細にお話を伺うことができた。その仙台市の担当者の目に、日本各地で起こっている街路樹の伐採と強剪定はどう映っているのだろうか。以下、それぞれについての回答をまとめる。

【1】街路樹の伐採

 大前提として、街路樹は自治体の資産であり、仙台市でも枯れてしまった街路樹や病気等で回復の見込みがない街路樹は伐採を行っている。

 それをふまえて、各地の自治体が大量に街路樹を伐る理由として考えられるのは、大径木化した樹木の剪定等にかかる維持管理費が財政負担と感じてしまうことや、そのほか、道路の再整備や歩道等が街路樹の根上がりによる凹凸(根が舗装等を持ち上げることで歩行者等が躓き転倒の要因となる)の対策として伐採するということも考えられる。

【2】強剪定

 各地で強剪定が行われる理由は、地域住民の要望があるからだろう。道路の幅員が狭いところなどでは、葉っぱがはみ出すことが嫌がられるので、強剪定をせざるを得なくなるものと考えられる。

 もう一つには、発注者である自治体が受注者に剪定の仕方をきちんと指導していないことがあることも考えられる。

 剪定の金額は幹回りで決まることから、丁寧に剪定しても強剪定にしても、金額は変わらない。自治体が強剪定を行う理由は、剪定を1回で済ませたいからだろう。

 しかし、このことは樹木にとっても決して良いことではない。

 強剪定をすると、翌年、翌々年に、同じ所からたくさんの葉っぱを出そうとするから、見栄えが悪くなる。仙台市はそういう姿を望んでいないので、強剪定はさせない。見栄えを良くしようとするともう一度剪定をすることになり、かえって費用がかかるものと認識している。

 1回の強剪定でよしとするのは、見栄えを良くしようと思っていないからだろう。

国連が警鐘を鳴らす「地球沸騰化」対策に寄与

 冒頭でふれたように、街路樹に囲まれた空間は涼しく、これは「地球沸騰化」(グテーレス国連事務総長)と言われる現代において必要なインフラだといえる。最後に、街路樹によるヒートアイランドの抑止効果について意識されているのか聞いてみたところ、以下の回答があった。

「仙台市の都心部の街路空間は高木が多く、樹冠が連続してつながった緑陰空間が形成されています。土の地表面からの水分の蒸発作用によるものや樹木に囲まれた緑陰空間を風が抜けていくことにより気温が下がります。街路樹は都心部のヒートアイランド対策に十分寄与しているものと考えています」