幸い私は試合会場に足を運んでいなかったが、ハンデ戦を見に行きたいと思う観客などいなかろう。チケットを買って観戦に来ていた客から「入場料を返せ!」と騒動が起きてもおかしくない事態だ。サモア戦のリーチにしてもフィジー戦のピーター・ラブスカフニにしても責められてしかるべきイージーなミスだし、本当にこれでW杯が戦えるのかと心配になるほどだった。
「リーチは自身が札幌の高校でラグビーをしていたから北海道で初の日本代表の試合に力が入りすぎたのではないか」と擁護する記事もあったが、そんなものは言い訳でしかない。ラブスカフニにしてもケガから復帰してきてやっと試合に出場できた試合であったが、果たして反則について厳しく取り締まることになっていたのをどれほど認識していたのか。
サモア・トンガ・フィジーとの3連戦では、主力選手の退場以外にも深刻な事態がいくつも目についた。まずパスが繋がらない。さらにボールを前にこぼすノックオンなどの単純なミスが多すぎる。日本代表は相手選手に対して2人で“Wタックル”に行くパターンになっているはずだが、それもキチンと実行されず、選手同士の息が合っていないことが明らかだった。
また、攻め方の戦術も定かではなく、何をやりたいのかさっぱり分からないような雑な試合の繰り返しだった。ラグビーというのは、戦術も含め、“強いチーム”が勝つという競技で、番狂わせはほとんど起きない。そこがサッカーとは大きく異なっている点だが、それだけに日本代表は一連の強化試合で戦術に磨きをかけておきたかった。
本番前、戦術をブラッシュアップする機会をみすみす手放す
戦術に関して言えば、2015年の第8回W杯で、日本は南アフリカと予選リーグ最終戦で対戦し、競り勝つことができた。いわゆる「ブライトンの奇跡」だ。
この試合の終盤、日本は敵陣にてペナルティを獲得、ペナルティキックかスクラムが選択できたが、エディー・ジョーンズHCが、引き分け狙いでペナルティゴールを狙うよう指示したにもかかわらず、リーチマイケルはスクラムを選択。このスクラムからトライを生み、その得点により強敵・南アフリカから奇跡的な勝利をもぎ取った。
ただリーチがスクラムを選択したのは、日本チームの南アフリカと同等にスクラムを組めると判断していたからだ。スクラムで負けているチームだったら、とっくに大敗を食らっていただろう。現在の日本代表には、そこまでのスクラムの強さはない。