習近平肝煎りのスマートシティーも大失敗
雄安新区は習近平が自ら発案、計画、指揮した国家級新区。「国家千年の大計」プロジェクトとして2017年4月に設立させた。完成は一応2035年予定で、2050年には先端テクノロジー企業と研究機関を集中させ、北京の非首都機能も移転した人口2000万人規模のスマート・エコシティーになる、という話だった。すでに5000億元(約10兆円)が投じられている。
だが、今のところは、工事のほとんどが中断し、人も企業も集まっていない空っぽの「爛尾」と呼ばれる廃墟群しかない。
目下、雄安には中央企業4社が登記し、その本社ビルが建設中で、大学、研究施設も4カ所が雄安に移転されている。だが、その移転条件とされている雄安居住は回避できる条項がある。つまり、人はほとんど住んでいない。
今年5月10日、習近平が第3期目の総書記、国家主席の座を固めたのち、新首相の李強と、書記処筆頭書記の蔡奇、副首相の丁薛祥、何立峰ら、新指導部をぞろぞろ引き連れて視察した。このときの様子はCCTVが報じていたが、この視察で廃墟群を目の当たりにしても、首相、副首相ら誰一人として、このプロジェクトに問題があるという発言をしなかった。
これは、新指導部として、雄安新区建設の失敗を否定し、新区建設継続を維持するために、改めてプロパガンダを打つための視察だったと言われている。
雄安新区は北京からおよそ100kmの場所にあり、習近平の「偉大な新時代」を象徴する都市プロジェクトとされた。鄧小平を超える指導者として共産党史に刻まれたい習近平は、鄧小平が創った深圳以上の都市を新たに作り、中国の国力の象徴にしようと考えた。
初期面積は100km2、中期発展で200km2、長期的には2000km2まで拡大し、現在の深圳以上の大きさを目指している。
2017年4月、北京・天津・河北共同発展指導チーム組長の張高麗は雄安新区に関する中国官製メディアの取材に、「このプロジェクトは習近平総書記が自ら計画し、自ら政策決定を下して推進している。習近平の大量の心血が注がれ、習近平の強烈な使命を担い、深遠な戦略眼と超越した政治的智慧を体現している」「雄安新区の前期計画、研究論証、計画のステージなどすべては習近平が招集する重要会議で配置を検討し、重要指示、命令を下したものだ」と語っている。
2018年5月には、外交部は全世界に向けて雄安新区を推奨し、当時の王毅外相は雄安新区を「中国と人類の発展方向に代表するものだ」「大都市が抱える病を解決するための中国式処方箋だ」と持ち上げていた。
理解しがたいのは、習近平がこれほどまでに雄安新区を重視しているなら、なぜもっと慎重に計画し、準備しなかったのか、ということだ。大宣伝とは裏腹に、計画自体は稚拙きわまりない。