- 英ロンドン東部のストリートアートで有名な通りで突然、社会主義を喧伝する習近平の「プロパガンダ」の落書きが描かれた。
- 作者は英名門芸術大学に留学中の中国人アーティストたち。これに反発した人たちが即座に上書きし、落書き合戦となった。
- この騒動は「これはアートか?」と国境を越えて論争となり、中国国内では情報が遮断された。
(福島香織:ジャーナリスト)
ロンドン・イーストエンドのストリートアートのキャンバスになっているブリックレーン(Brick Lane)で6日、突如、習近平が2012年に打ち出した社会主義核心価値観のプロパガンダメッセージが登場した。白く塗られた壁の上に赤いペンキスプレーで、富強・民主・文明・和諧・自由・平等・公正・法治・愛国・敬業・誠信・友善の12単語24字が描かれた。字体も中国のプロパガンダ用によくつかわれる伝統的なブロック体だ。
作者はロンドンのロイヤルカレッジ・オブ・アートで学ぶ王漢争ら留学中の若きアーチストたち。作品のタイトルは「反者道之動(かえる者は道の動なり)」。根源への復帰を意味する老子の言葉だ。
だがこの「ストリートアート」もしくは「落書き」は、中国内外で大きな議論を引き起こした。反共的な華人たちは、自由の国で中共プロパガンダを行った!と怒り、愛国ネットユーザーたちは、中国共産党に対する「高級黒」(賞賛しているように見えてけなしている風刺、皮肉表現)、あるいは「低級紅」(本気で賞賛しているが、結果的に評価を下げている、ひいきの引き倒し表現)だと批判。果たしてこれはアートかプロパガンダか、それとも単に下品な落書きか。
ブリックレーンの落書きは5日の夜から6日にかけて描かれた。もともとあった多くのストリートアート作品を真っ白に塗りつぶし、その上に赤いスプレーペンキで、中国の農村の白壁にあるような、ブロック体の簡体字で12単語のスローガンを描いた。塗りつぶされたアート作品の中には、故マヤティス・フランクの生前の最後の作品やそれを記念したベンズ・ブロフマンの作品もあった。