中国が、外為法の「穴」を突いて買収や出資で日本企業から技術を入手しようとしている。楽天グループへの騰訊控股(テンセント)による出資でも外為法は問題となったが、いまだ穴は塞がっていない。これで日本の技術を守れるのか? 細川昌彦・明星大学教授に3回に分けて話を聞くシリーズの最終回。(JBpress)
第1回:中国が技術を入手する巧妙手口、『分断』と『偽情報』で日本企業を揺さぶる
第2回:中国が狙うのは先端半導体だけじゃない!パワー半導体など汎用品にも照準
──前回までは、半導体の素材や製造装置メーカーが中国に狙われているという話を聞きました。日本企業同士が情報交換をあまりしない「分断」状況にある隙をつかれ、「偽情報」を流されるなどして「中国に工場をつくれ」と揺さぶられている実態は危機的な状況だと思います。
一方、中国国内に工場を誘致するのではなく、もっと荒っぽく技術を獲得する手段もあります。それが「買収」です。細川さんはこうした動きについても警鐘を鳴らしています。具体的には、どのような危機が迫っているのでしょうか。
細川昌彦・明星大学教授(以下、敬称略):工場を誘致することが難しい、もしくはそうしたことがやりにくい分野で仕掛けてくるのが買収です。これも、日本の技術を入手するのが狙いです。
この買収の阻止をする手段が、外国為替及び外国貿易法、いわゆる「外為法」のはずなのですが、これが機能していません。日本への対内直接投資を外国企業が実施する場合に、指定業種について事前届出制があるのですが、この法規制があまりに脆弱で抜け穴がある。それを中国は調べ上げて出資や買収を仕掛けてきています。
2021年3月に楽天グループが中国の騰訊控股(テンセント)から出資を受け入れた際、事前の届け出は免除されており、当時、私はこの状況を激しく批判しました。しかし、今もこうした抜け穴が放置されています。
民間の中国企業が日本企業に出資する場合、相手の非公開の技術を入手したり経営を支配したりする意図がないという性善説に基づいてしまうと、事前の届け出がされない可能性があります。この抜け穴を早急にふさぐべきなのですが、穴は空いたままです。
日本企業は外為法によって守られているから大丈夫、と安心しない方がいいでしょう。しかも、今は円安なので外国企業にとっては買い時で、半導体だけではなく電子部品などの分野も狙われています。第1回でも日本が狙われている分野として電子部品を挙げましたが、例えば積層セラミックコンデンサーなど日本企業が競争力を持つ製品は要注意です。
こうした分野では基幹部品を納入している中堅中小のサプライヤーも注意しなければいけません。これは決して大企業だけの問題ではありません。