米国と中国は、人工知能(AI)などに使われる先端半導体を巡って火花を散らす。だが、中国が狙うのは先端分野だけではない。むしろ半導体市場の大部分を占める汎用品を標的にし、国産化と安値攻勢でライバル国の半導体産業を死に追いやろうとしていることは、あまり知られていない。細川昌彦・明星大学教授に3回に分けて話を聞くシリーズの第2回。(JBpress)
第1回:中国が技術を入手する巧妙手口、「分断」と「偽情報」で日本企業を揺さぶる
──米中の半導体戦争では、人工知能(AI)などに使われる最先端の半導体がターゲットになっていると言われています。
細川昌彦・明星大学教授(以下、敬称略):先端半導体ばかりに注目が集まっていますが、汎用品の半導体はどうでもいいかと言ったら、決してそうではありません。半導体の8割を占めるボリュームゾーンは汎用品です。特に、パワー半導体は、電気自動車(EV)にも省エネ家電にも、様々な製品に使われます。ここには何も規制がかかっていません。そこを中国は狙ってきています。
国を挙げて大規模投資をして生産能力を上げ、補助金を武器に過剰生産して世界中に安値で売りまくる。日本を含む他国の半導体産業は壊滅的な影響を受けます。つまり、圧倒的な生産能力で他国の半導体産業を死に追いやろうとしているのです。党の中央からは「世界シェアの80%
鉄鋼分野などでのやり方と同じです。これこそが中国の半導体戦略で、それを実行するために日本の材料と装置の技術を狙っているという構図です。
──中国市場は大きいので、企業としては無視できません。投資家からも利益を上げろと言われます。どうしても短期的な思考に陥りがちで、中国の誘いに乗って進出してしまいそうです。
細川:中国に輸出するのと進出するのとでは、技術流出のリスクは雲泥の差